カフェで学術論文を読んでいると、隣のテーブルから聞こえてきた会話。
「あの子、いつも難しそうな本読んでるよね。ちょっと近寄りがたいかも」
心臓がドキッとした。まさか私のことを言っているのではないだろうけれど、なんだか胸がざわついた。
学術論文を読むこと、知的な話題に興味を持つことは、恋愛においてマイナス要素なのだろうか。
「賢すぎる女性」への複雑な視線
大学時代、コミュニケーション学を専攻していた私は、常に論文や研究書に囲まれていた。それが当たり前の環境だったから、気づかなかった。
でも社会に出てから、徐々に感じるようになった。知的な話題を振ると、なんとなく場が重くなる。「難しいことは分からない」と言われることが増える。
そして時々、こんな言葉を聞く。 「君みたいに頭のいい女性は、男性が萎縮しちゃうんじゃない?」
それは褒め言葉として言われているのだけれど、なぜか素直に喜べない。知的であることが、恋愛において障害になっているような気がして。
男性が萎縮する理由
なぜ男性は知的な女性に萎縮するのだろう。
一つは、「自分より賢い女性はプライドが傷つく」という心理。特に日本社会では、男性が女性をリードするという価値観が根強く残っている。
もう一つは、「話が合わないのではないか」という不安。学術的な話題についていけない、つまらないと思われるのではないかという恐れ。
でも、これらの反応は、実は男性だけの問題ではない。社会全体が作り上げた「女性らしさ」という枠組みの中で、知性は時として「可愛くない」属性として扱われてしまう。
知性を隠すべきなのか
「もっと可愛らしく振る舞った方がいいのかな」 「難しい話はやめて、もっとライトな話題にしよう」
そんな風に考えたことが、正直何度もある。
でも、自分の興味や関心を隠して得られる関係は、本当に自分が求めているものなのだろうか。知的な自分を受け入れてもらえない関係で、本当に幸せになれるのだろうか。
私は一度、デートで相手に合わせて「分からない」フリをしたことがある。本当は知っている話題なのに、「すごいですね」と言って聞き役に回った。
その時の居心地の悪さを、今でも覚えている。本当の自分ではない自分を演じているような、なんとも言えない違和感。
知性は魅力ではないのか
でも考えてみてほしい。知性や教養は、本来とても魅力的な特質のはず。
深い洞察力、幅広い知識、論理的な思考力。これらは人として、パートナーとして、非常に価値のある資質だ。
困難な状況で冷静に判断できる。様々な角度から物事を考えられる。興味深い話題を提供できる。一緒にいて学びがある。
こうした魅力を理解してくれる人もいるはず。ただ、そういう人との出会いが少ないだけなのかもしれない。
同じような悩みを抱える人たち
実は、同じような悩みを抱えている女性は多い。
医師、研究者、弁護士、大学教員。専門性の高い職業に就く女性たちからよく聞く悩み。「仕事の話をすると引かれる」「専門的すぎて理解してもらえない」
でも彼女たちは、決して恋愛を諦めているわけではない。自分らしくいられる関係を求めているだけ。
相手を選ぶ基準
もしかしたら、私たちは相手を選ぶ基準を見直す必要があるのかもしれない。
「知的な話題に興味を示してくれる人」 「学ぶことを楽しめる人」 「自分の専門分野を尊重してくれる人」
外見や年収だけでなく、こうした価値観の共有を重視すること。それは決して高望みではない、基本的な相性の問題だ。
知性を武器にする
知性を隠すのではなく、むしろ武器にしてはどうだろう。
自分の専門分野について情熱を持って語れること。様々な話題に対して独自の視点を持っていること。これらは間違いなく魅力だ。
大切なのは、相手を見下すような態度を取らないこと。知識をひけらかすのではなく、相手の興味を引き出すように話すこと。
「教える」のではなく、「一緒に考える」姿勢で接すること。
あなたの知性を愛してくれる人
きっといる。あなたの知性を、学術的な興味を、深い思考を愛してくれる人が。
その人との出会いは、もしかしたら図書館かもしれない。学会かもしれない。読書会かもしれない。あるいは、全く違う場所で、偶然の会話から始まるかもしれない。
でも確実に言えることは、本当の自分を隠していては、そういう人との出会いは生まれないということ。
自分らしくいることの勇気
学術論文を読むあなたは、素晴らしい。 知的な話題を楽しむあなたは、魅力的。 深く考えることができるあなたは、貴重な存在。
それを恋愛対象外だと言う人がいるなら、その人とは縁がなかっただけ。あなたが変わる必要はない。
自分の知性を誇りに思い、それを理解し尊重してくれる人との出会いを信じて。
今日も堂々と、あなたの興味のある本を開こう。カフェでも、図書館でも、電車の中でも。
あなたのその姿を素敵だと思ってくれる人が、きっとどこかにいる。