周りの友達が恋愛話で盛り上がっているとき、私はいつも少し違和感を感じていた。
「なぜそんなに熱くなれるのだろう」「私には理解できない」
そう思いながらも、自分が何かおかしいのではないかと不安になっていた。
みんなと違う自分への困惑
学生時代から、私は恋愛に対してそれほど興味を持てずにいた。
友達が恋人の話をしているとき、ドラマや映画の恋愛シーンを見ているとき、雑誌の恋愛特集を読んでいるとき。どれも「なんとなく理解はできるけれど、心から共感はできない」という感覚だった。
恋愛感情がまったくないわけではない。でも、周りの人が描写するような激しい感情や、人生を左右するような恋愛への憧れは、正直よく分からなかった。
大学でコミュニケーション学を学んでいた時、恋愛心理学の授業もあった。そこで学ぶ理論は興味深かったけれど、どこか他人事のように感じていた。
「普通」への同調圧力
社会には見えない同調圧力がある。
「女性なら恋愛に興味があって当然」「年頃なら恋人がいて当然」「結婚願望があって当然」
そんな「当然」に囲まれて、私は自分を異常だと感じるようになった。
友達に恋人ができると「良かったね」と言いながらも、心の底では「なぜそんなに嬉しそうなのだろう」と思っていた。自分が冷たい人間なのではないかと心配になった。
自分を変えようとした時期
一時期、「普通」になろうと努力したことがある。
恋愛小説を読み、恋愛映画を観て、マッチングアプリを試してみた。友達に紹介してもらったり、合コンに参加したりもした。
でも、どうしても心から楽しめなかった。相手が素敵な人だと頭では理解できても、胸がときめくことはなかった。自分が演技をしているような気分になった。
そんな自分に嫌気がさして、「私はきっと愛される資格がないのだ」と思い込むようになった。
恋愛感情にも個人差がある
でも、ある時気づいた。恋愛感情にも個人差があるということ。
食べ物の好みが人それぞれ違うように、音楽の趣味が人それぞれ違うように、恋愛への関心や感情の強さも人それぞれ違って当然だった。
スポーツが苦手な人がいるように、恋愛が苦手な人がいてもおかしくない。絵を描くのが好きな人と苦手な人がいるように、恋愛に興味がある人とない人がいてもいい。
それに気づいたとき、少し肩の力が抜けた。
アロマンティックという概念
調べているうちに、「アロマンティック」という言葉を知った。
他者に対してロマンティックな感情を抱かない、または抱きにくい人のことを指す言葉だ。これは性的指向の一種で、決して病気や異常ではない。
すべてのアロマンティックの人が同じというわけではない。恋愛感情は薄いけれど、深い友情や家族愛は感じる人もいる。パートナーシップは築けるけれど、ロマンティックな恋愛感情は感じない人もいる。
私が完全にアロマンティックかどうかは分からない。でも、この概念を知ったことで、「自分のような人も存在する」ということが分かった。
自分の感情を否定しない
恋愛感情が薄いからといって、自分の感情すべてが薄いわけではない。
友達への愛情、家族への愛情、仕事への情熱、趣味への熱中。私には私なりの豊かな感情がある。
ただ、それが恋愛というカテゴリーに向かないだけ。それを無理に変えようとする必要はないのだと、ようやく理解できた。
人とのつながりは恋愛だけではない
人間関係の豊かさは、恋愛関係だけで測れるものではない。
深い友情、温かい家族関係、信頼できる同僚関係、心を通わせる師弟関係。人とのつながりには様々な形がある。
私は恋愛は苦手だけれど、友情を育むのは得意だ。一対一の深い会話も好きだし、相手の悩みを聞くのも得意だ。ただ、それが恋愛感情には発展しないだけ。
それでも十分に豊かな人間関係を築くことができる。
周りの理解を求めすぎない
すべての人に理解してもらう必要はない。
「恋愛に興味がない」と言うと、「まだ良い人に出会っていないだけ」「いつか変わるよ」と言われることがある。善意からの言葉だと分かっているけれど、少し辛い。
でも、すべての人に理解してもらおうとするのは無理がある。自分が自分を受け入れることが一番大切。
理解してくれる人は必ずいる。そんな人たちとの関係を大切にしていけばいい。
自分なりの幸せを見つける
恋愛中心の幸せ像にとらわれる必要はない。
一人の時間を充実させること、好きな仕事に打ち込むこと、友達との時間を大切にすること、家族との絆を深めること、趣味を極めること。
幸せの形は人それぞれ。私には私なりの幸せがある。
今の自分を肯定する
恋愛感情が薄い自分を受け入れるまでには時間がかかった。
でも今は、この特性も自分らしさの一部だと思えるようになった。無理に変えようとせず、ありのままの自分で生きていこうと決めた。
もしかしたら、将来誰かに特別な感情を抱くかもしれない。でも、そうでなくても構わない。どちらの自分も、等しく価値がある。
同じような人たちへ
もし、恋愛感情が薄い自分に悩んでいる人がいたら、伝えたいことがある。
あなたは何も間違っていない。 あなたには価値がある。 あなたなりの愛し方、つながり方がある。
世界は多様性に満ちている。恋愛感情の在り方も、その多様性の一部。
自分を責めることなく、自分らしい人生を歩んでいってほしい。
私たちは、私たちなりに愛し、愛される存在なのだから。