誰かが優しくしてくれるとき、なぜか胸がざわざわする。
嬉しい気持ちと同時に、どこか不安になってしまう。この優しさに甘えてしまったら、きっと迷惑をかけてしまう。期待しすぎてしまう。そして最終的には、裏切られてしまうのではないか。
だから、せっかくの優しさを受け取るのが怖くなってしまう。
甘えることへの罪悪感
「甘える」という言葉には、どこかネガティブな響きがある。
自立できていない。依存している。わがまま。迷惑をかけている。
そんなイメージが頭をよぎって、誰かの好意を素直に受け取ることができない。
でも本当は、甘えることは人間関係の自然な営み。お互いに支え合い、頼り合うことで、より深いつながりが生まれる。
私も長い間、「自分のことは自分で」と思い込んでいた。大学時代、一人で何でもこなそうとして、結果的に孤立してしまった経験がある。友達が手助けを申し出てくれても、「大丈夫です」と断り続けた。
そうやって自立を保とうとしているうちに、気づいたら一人ぼっちになっていた。
優しさの裏を疑ってしまう心
人が優しくしてくれるとき、つい疑ってしまうことがある。
「何か下心があるのではないか」 「後で見返りを求められるのではないか」 「単なる同情なのではないか」
過去に裏切られた経験があったり、条件付きの愛情しか知らなかったりすると、純粋な優しさを信じることが難しくなる。
でも、世の中には本当に無償の優しさも存在する。ただあなたを思いやってくれる人も確実にいる。その可能性を最初から否定してしまうのは、もったいない。
失うことへの恐怖
優しさに甘えることが怖い本当の理由は、それを失うことが怖いから。
一度その温かさを知ってしまったら、それなしではいられなくなってしまう。そして、いつかその人が離れていったとき、耐えられないほどの寂しさを感じるかもしれない。
だったら最初から距離を置いておいた方が安全。そう思ってしまう気持ちは、よく分かる。
私も以前、とても親しい友人を失った経験がある。その人にたくさん甘えて、たくさん支えてもらっていた。だからこそ、その人がいなくなったときの喪失感は想像を絶するものだった。
それ以来、誰かに深く依存することが怖くなった。
甘え上手と甘え下手
でも気づいたことがある。甘え上手な人と甘え下手な人の違いを。
甘え上手な人は、相手の負担にならない程度に甘える。感謝の気持ちを忘れない。そして、自分も相手のために何かをしようとする。
一方で甘え下手な人は、「甘える」ことと「依存する」ことを混同してしまう。相手に何もかも任せようとしたり、逆に全く甘えずに距離を置いたり。
適度な甘えは、関係を深める潤滑油。でも過度な甘えは、関係を壊してしまう。
小さなステップから始める
いきなり大きく甘えようとする必要はない。
まずは小さなことから。重い荷物を持ってもらう。道を教えてもらう。おすすめのお店を聞いてみる。
そうやって少しずつ、人の優しさを受け取る練習をしてみよう。そして、その優しさに対してきちんと感謝の気持ちを伝えよう。
私も最初は緊張した。でも少しずつ慣れていくうちに、人とのつながりがより温かいものになっていくのを感じた。
甘えることで生まれる絆
実は、適度に甘えることで、関係はより深くなる。
人は、頼られることで自分の価値を感じる生き物。あなたが甘えることで、相手も「必要とされている」という喜びを感じることができる。
もちろん、一方的に甘えるだけではいけない。相手が困っているときには、今度はあなたが支える番。そうやってお互いに支え合うことで、本当の信頼関係が築かれる。
優しさを受け取る勇気
人の優しさを受け取ることは、実は勇気のいること。
それは相手を信頼するということ。そして、自分も愛される価値があると認めるということ。
怖がらずに、少しずつでいいから、その優しさを受け取ってみよう。完璧に甘える必要はない。不器用でもいい。
あなたを大切に思ってくれる人は、あなたの不器用さも含めて受け入れてくれる。
バランスを大切に
甘えることと自立することは、対立するものではない。
時には甘えて、時には自分で頑張る。時には支えてもらって、時には支える。そのバランスが、健康的な人間関係を作る。
完全に自立しようとする必要もないし、完全に依存する必要もない。その時々で、自分が必要とするものを素直に受け取ればいい。
あなたの優しさも誰かの支えになる
最後に忘れないでほしいのは、あなたも誰かにとって大切な存在だということ。
あなたが誰かに甘えることで、その人もあなたに甘えやすくなる。あなたが優しさを受け取ることで、その人も優しさを与える喜びを感じることができる。
人とのつながりは、一方通行ではない。お互いが与え合い、受け取り合うことで成り立っている。
今日も、誰かの小さな優しさに出会ったら、少しだけ勇気を出して受け取ってみよう。そして、その温かさを心に留めて、今度はあなたが誰かに優しさを届ける番。
そうやって循環する優しさの中で、あなたの心も少しずつ温かくなっていく。