人の優しさに甘えるのが怖い

人の優しさに甘えるのが怖い

人の親切や優しさを素直に受け取ることができず、甘えることへの恐怖を抱く心理について

読了時間: 5分

誰かが優しくしてくれるとき、なぜか胸がざわざわする。

嬉しい気持ちと同時に、どこか不安になってしまう。この優しさに甘えてしまったら、きっと迷惑をかけてしまう。期待しすぎてしまう。そして最終的には、裏切られてしまうのではないか。

だから、せっかくの優しさを受け取るのが怖くなってしまう。

甘えることへの罪悪感

「甘える」という言葉には、どこかネガティブな響きがある。

自立できていない。依存している。わがまま。迷惑をかけている。

そんなイメージが頭をよぎって、誰かの好意を素直に受け取ることができない。

でも本当は、甘えることは人間関係の自然な営み。お互いに支え合い、頼り合うことで、より深いつながりが生まれる。

私も長い間、「自分のことは自分で」と思い込んでいた。大学時代、一人で何でもこなそうとして、結果的に孤立してしまった経験がある。友達が手助けを申し出てくれても、「大丈夫です」と断り続けた。

そうやって自立を保とうとしているうちに、気づいたら一人ぼっちになっていた。

優しさの裏を疑ってしまう心

人が優しくしてくれるとき、つい疑ってしまうことがある。

「何か下心があるのではないか」 「後で見返りを求められるのではないか」 「単なる同情なのではないか」

過去に裏切られた経験があったり、条件付きの愛情しか知らなかったりすると、純粋な優しさを信じることが難しくなる。

でも、世の中には本当に無償の優しさも存在する。ただあなたを思いやってくれる人も確実にいる。その可能性を最初から否定してしまうのは、もったいない。

失うことへの恐怖

優しさに甘えることが怖い本当の理由は、それを失うことが怖いから。

一度その温かさを知ってしまったら、それなしではいられなくなってしまう。そして、いつかその人が離れていったとき、耐えられないほどの寂しさを感じるかもしれない。

だったら最初から距離を置いておいた方が安全。そう思ってしまう気持ちは、よく分かる。

私も以前、とても親しい友人を失った経験がある。その人にたくさん甘えて、たくさん支えてもらっていた。だからこそ、その人がいなくなったときの喪失感は想像を絶するものだった。

それ以来、誰かに深く依存することが怖くなった。

甘え上手と甘え下手

でも気づいたことがある。甘え上手な人と甘え下手な人の違いを。

甘え上手な人は、相手の負担にならない程度に甘える。感謝の気持ちを忘れない。そして、自分も相手のために何かをしようとする。

一方で甘え下手な人は、「甘える」ことと「依存する」ことを混同してしまう。相手に何もかも任せようとしたり、逆に全く甘えずに距離を置いたり。

適度な甘えは、関係を深める潤滑油。でも過度な甘えは、関係を壊してしまう。

小さなステップから始める

いきなり大きく甘えようとする必要はない。

まずは小さなことから。重い荷物を持ってもらう。道を教えてもらう。おすすめのお店を聞いてみる。

そうやって少しずつ、人の優しさを受け取る練習をしてみよう。そして、その優しさに対してきちんと感謝の気持ちを伝えよう。

私も最初は緊張した。でも少しずつ慣れていくうちに、人とのつながりがより温かいものになっていくのを感じた。

甘えることで生まれる絆

実は、適度に甘えることで、関係はより深くなる。

人は、頼られることで自分の価値を感じる生き物。あなたが甘えることで、相手も「必要とされている」という喜びを感じることができる。

もちろん、一方的に甘えるだけではいけない。相手が困っているときには、今度はあなたが支える番。そうやってお互いに支え合うことで、本当の信頼関係が築かれる。

優しさを受け取る勇気

人の優しさを受け取ることは、実は勇気のいること。

それは相手を信頼するということ。そして、自分も愛される価値があると認めるということ。

怖がらずに、少しずつでいいから、その優しさを受け取ってみよう。完璧に甘える必要はない。不器用でもいい。

あなたを大切に思ってくれる人は、あなたの不器用さも含めて受け入れてくれる。

バランスを大切に

甘えることと自立することは、対立するものではない。

時には甘えて、時には自分で頑張る。時には支えてもらって、時には支える。そのバランスが、健康的な人間関係を作る。

完全に自立しようとする必要もないし、完全に依存する必要もない。その時々で、自分が必要とするものを素直に受け取ればいい。

あなたの優しさも誰かの支えになる

最後に忘れないでほしいのは、あなたも誰かにとって大切な存在だということ。

あなたが誰かに甘えることで、その人もあなたに甘えやすくなる。あなたが優しさを受け取ることで、その人も優しさを与える喜びを感じることができる。

人とのつながりは、一方通行ではない。お互いが与え合い、受け取り合うことで成り立っている。

今日も、誰かの小さな優しさに出会ったら、少しだけ勇気を出して受け取ってみよう。そして、その温かさを心に留めて、今度はあなたが誰かに優しさを届ける番。

そうやって循環する優しさの中で、あなたの心も少しずつ温かくなっていく。