朝、鏡の前で今日の「キャラクター」を決める。
職場では「しっかり者の私」、友達といるときは「明るい私」、家族の前では「良い娘の私」。
でも、本当の私って、一体どの私なんだろう。
そして、もし本当の私を見せたら、みんな離れていってしまうのではないだろうか。
仮面をつけ続ける理由
私たちはいつの間にか、場面に応じて違う顔を使い分けることを覚えた。
それは決して悪いことではない。社会生活を営む上で、ある程度の「演技」は必要。でも、いつしかその仮面が重くなって、外すのが怖くなってしまった。
「本当の私は、こんなにダメなのに」 「本当の私は、もっと弱くて、もっと面倒くさいのに」 「本当の私を知ったら、きっとがっかりされる」
そんな恐れが、仮面を外すことを阻んでいる。
完璧でいなければならないという呪い
私が大学生だった頃、表面上はうまくやっているように見えた。成績も悪くないし、友達もいるし、先生からの評価も高かった。
でも内心では、いつもビクビクしていた。「もし本当の私がバレたら」という恐怖に常に怯えていた。
コミュニケーション学を専攻していたのに、実は人とのコミュニケーションが苦手。理論は分かるのに、実践になると頭が真っ白になる。そんな矛盾を抱えた自分が、とても恥ずかしかった。
完璧でいなければ愛されない。そんな思い込みが、私を縛り付けていた。
本当の自分って何だろう
でも、考えてみると「本当の自分」って何なんだろう。
職場の私も、友達といる私も、家族の前の私も、すべて私の一部。完全な偽物ではない。その時々の状況で、私の中の異なる面が表に出ているだけ。
本当の自分というのは、もしかしたら一つの固定されたものではなく、様々な面を持つ複雑な存在なのかもしれない。
弱い私も、強い私も。 明るい私も、暗い私も。 頑張る私も、サボりたい私も。
すべてが、本当の私。
完璧でない自分を受け入れてくれる人
長い間、私は完璧な自分しか見せてこなかった。だから、周りの人たちも私を「しっかりした人」として見ていた。
でも、ある日体調を崩して、友達の前で泣いてしまったことがある。「いつも強いと思っていたから、意外だった」と言われた後、「でも、こういう一面があるからこそ、もっと親しみやすくなった」と続けてくれた。
その時初めて気づいた。完璧でない私を見せることで、かえって人との距離が縮まることもあるのだと。
段階的に自分を見せていく
いきなり すべてをさらけ出す必要はない。
まずは、信頼できる一人の人に、小さな本音を打ち明けてみる。
「実は、いつも自信があるふりをしているけれど、本当はとても不安なんです」 「みんなの前では明るく振る舞っているけれど、一人になると寂しくなります」 「仕事はできるふりをしているけれど、本当はよく分からないことだらけです」
そんな小さな「本当」から始めてみる。
もしその人がその「本当」を受け入れてくれたら、もう少し深い部分を見せてみる。そうやって、少しずつ心の扉を開いていく。
拒絶されることへの恐れ
でも、やっぱり怖い。本当の自分を見せて、拒絶されたらどうしよう。
その恐れは自然なもの。人間は社会的な生き物だから、集団から排除されることを本能的に恐れる。
でも考えてみてほしい。もし本当の自分を受け入れてくれない人がいたとしても、それは本当にあなたのことを大切に思ってくれている人と言えるだろうか。
表面的な付き合いしかできない関係よりも、少数でも本当に理解し合える関係の方が、きっと豊かで意味のあるもの。
自分を愛することから始めよう
他者に本当の自分を見せる前に、まず自分自身が本当の自分を受け入れることが大切。
ダメな部分も、弱い部分も、面倒くさい部分も、すべて含めて「私らしさ」として受け入れる。
「完璧でなくても、私は私として価値がある」 「弱さがあっても、私は愛される価値がある」 「失敗することがあっても、私は大切な存在」
そう思えるようになったとき、他者に本当の自分を見せることへの恐れも、少しずつ小さくなっていく。
本当のつながりは、本当の自分から
表面的な自分だけを見せていては、表面的な関係しか築けない。
深いつながり、本当の理解、心からの愛情。そうしたものは、お互いが本当の自分を見せ合って初めて生まれる。
リスクはある。傷つく可能性もある。でも、それと引き換えに得られるものは、きっとそのリスクに見合うほど大きい。
今日から少しずつ
急に変わる必要はない。でも、今日から少しずつ、本当の自分を見せることを始めてみよう。
まずは、一人の時間に、鏡の前で本当の気持ちを声に出してみる。 次に、信頼できる人に、小さな本音を話してみる。 そして、少しずつ、ありのままの自分で人と接してみる。
怖いかもしれない。でも、その先には、今まで経験したことのない深いつながりが待っている。
あなたの本当の姿は、きっと思っているよりもずっと愛おしい。その美しさを、恐れずに世界に見せてあげよう。
仮面を外したとき、本当の人生が始まる。