また今日も、友達から恋愛相談のメッセージが届いた。
「ちょっと聞いてほしいことがあるんだけど…」
そのメッセージを見て、心の中で小さくため息をつく。嬉しいような、困惑するような、そして少しだけ切ないような気持ちが混ざり合う。
なぜ私に相談するのだろう。私は恋愛の専門家でもなければ、豊富な経験があるわけでもないのに。
「相談しやすい人」というレッテル
いつの間にか私は、周りから「相談しやすい人」として認識されるようになった。
冷静で客観的。感情的にならない。秘密を守る。的確なアドバイスをくれる。
確かにそういう面はあるかもしれない。大学でコミュニケーション学を学んだこともあって、人の話を聞くのは得意な方だと思う。相手の気持ちに寄り添いながら、論理的に状況を整理することもできる。
でも、それと「恋愛の悩みを解決できる」ことは別問題だ。
経験の少なさという皮肉
皮肉なことに、恋愛相談をされることが多い人ほど、実は自分自身の恋愛経験は少なかったりする。
私もそうだ。友達の恋愛話は詳しく知っているけれど、自分の恋愛となると全く別の話。理論的には「こうすべき」と分かっていても、いざ自分のこととなると何もできない。
友達の彼氏の行動パターンは分析できるのに、自分が気になる人の心理は全く読めない。客観的な立場だからこそ見えることと、当事者だからこそ見えないこと。その差を痛感する瞬間が何度もある。
相談される理由の複雑さ
なぜ私に相談するのか、その理由を考えてみる。
もしかしたら、恋愛経験が少ないからこそ相談しやすいのかもしれない。同じような恋愛をしている友達だと、比較されたり、競争心が生まれたりする可能性がある。
でも私なら安全。恋愛の当事者ではないから、脅威にならない。だから安心して悩みを打ち明けられる。
そう考えると少し切ない。私は「恋愛をしない人」として位置づけられているのかもしれない。
答えられない質問たち
「どうしたら彼の気持ちが分かる?」 「この行動って脈ありかな?」 「どうやって関係を進展させたらいい?」
そんな質問を投げかけられるたび、正直に答えたくなる。
「私も知りたい」
でもそんなことは言えない。相談してくれた友達を困らせてしまうし、期待を裏切ることになる。だから精一杯考えて、本やネットで得た知識を総動員して、それらしいアドバイスをする。
でも内心では思っている。本当に恋愛について詳しいなら、私だってもう少し恋愛上手になっているはず。
聞き役の孤独
恋愛相談を受けていると、友達の恋愛の詳細をすべて知ることになる。
彼からのメッセージの内容。デートでの出来事。喧嘩の原因。仲直りの方法。
まるで恋愛ドラマを見ているような気分になることもある。でも自分は永遠に観客席にいる。
そして相談が終わった後の静寂。友達は彼とのやり取りに戻っていき、私は一人でその話の余韻に浸る。他人の恋愛を疑似体験しているような、不思議な気持ち。
自分の気持ちを話せない
一番複雑なのは、自分も相談したいことがあるときだ。
でも私は「相談を受ける側」として位置づけられているから、自分の悩みを打ち明けるタイミングが分からない。
「実は私も…」と切り出そうとしても、なんだか場違いな気がしてしまう。私の恋愛の悩みなんて、きっと友達にとっては意外で、どう反応していいか分からないかもしれない。
だから結局、自分の気持ちは自分の中にしまっておく。
感謝されることの複雑さ
相談を受けた後、よく感謝される。
「話を聞いてもらえてすっきりした」 「おかげで整理できた」 「いつもありがとう」
その言葉は確かに嬉しい。誰かの役に立てているという実感は得られる。
でも同時に思う。私が本当に欲しいのは感謝の言葉だけだろうか。時には私も、誰かに甘えたり、頼ったり、相談したりしたい。
恋愛相談の価値
それでも、恋愛相談を受けることには意味があると思う。
友達の恋愛を通して、人間関係の複雑さや美しさを学ぶことができる。恋愛の多様性や、人それぞれの価値観の違いも見えてくる。
そして何より、誰かの大切な時間に関わらせてもらえるということ。友達が私を信頼して、心の内を打ち明けてくれるということ。
これらはかけがえのない体験だ。
相談される側として気をつけていること
恋愛相談を受けるとき、私が心がけていることがある。
自分の価値観を押し付けないこと。相談者の気持ちを第一に考えること。批判的にならないこと。そして、答えが分からないときは正直にそう伝えること。
完璧なアドバイスができなくても、真摯に向き合うことはできる。それだけでも、相談してくれた人にとって意味があるはず。
私の恋愛はいつ始まるのか
でも時々思う。私の恋愛相談を聞いてくれる人は、いつ現れるのだろう。
友達の恋愛話を聞きながら、「いいなあ」と思う自分がいる。羨ましいと思う気持ちと、祝福したい気持ちが混在する。
でもきっと、その日はいつか来る。私が相談する側になって、今度は誰かが私の話を聞いてくれる日が。
今の役割も大切にしたい
恋愛相談をされることは、確かに複雑な気持ちを抱かせる。
でも、それは私に与えられた大切な役割なのかもしれない。人の気持ちに寄り添うこと、客観的な視点を提供すること、安心できる存在でいること。
いつか私も恋愛の当事者になったとき、この経験がきっと役に立つ。他の人の恋愛を見てきたからこそ分かることもあるはず。
今日もまた誰かの恋愛相談を受けるかもしれない。その時は、複雑な気持ちを抱えながらも、精一杯向き合いたいと思う。
そして心の片隅で、いつか私の番も来ることを、静かに信じていよう。