映画を見ていると、心がざわざわする。
スクリーンの中で繰り広げられる恋愛ストーリーに、胸が締め付けられるような憧れを感じる。同時に、「でも現実はそんなに甘くない」という冷めた気持ちも湧いてくる。
憧れと諦め。この二つの感情が、いつも私の心の中で静かに戦っている。
消えない憧れ
どんなに「恋愛なんて」と思っても、憧れは消えない。
誰かに大切にされたい。 誰かの特別な存在になりたい。 手を繋いで歩きたい。 「おかえり」と「ただいま」を交わしたい。
そんなささやかな願いが、心の奥底でずっと燃え続けている。
友達のカップルを見ているとき、街で手を繋いでいる恋人同士を見かけたとき、そんな憧れがふっと表面に浮かび上がってくる。
その瞬間、胸がキュッと苦しくなる。
積み重なる諦め
でも同時に、諦めの気持ちも確実に存在する。
「私にはそんな相手は現れない」 「期待するから傷つく」 「一人の方が楽だし、自由だし」
こんな思いが、憧れにブレーキをかける。
過去の経験が諦めを作ったのかもしれない。好きになった人に振り向いてもらえなかった記憶。想いを伝える勇気が出なかった後悔。理想と現実のギャップに打ちのめされた経験。
私も大学時代、何度か恋をした。でも結果は いつも同じ。相手は私を「良い友達」としてしか見てくれない。そんなことが続くうちに、「きっと私は恋愛には向いていないんだ」と思うようになった。
期待することの怖さ
憧れを抱くことは、期待することでもある。
そして期待は、裏切られたときの痛みも連れてくる。
「今度こそは」と思って期待して、また裏切られる。その繰り返しが怖くて、いつの間にか期待すること自体を避けるようになった。
期待しなければ、失望することもない。 憧れなければ、現実とのギャップに苦しむこともない。
でも、期待も憧れもない人生って、どこか色褪せて見える。
中途半端な位置
憧れと諦めの間にいる私たちは、どこか中途半端な位置にいる。
完全に諦めているわけでもない。 完全に希望を持っているわけでもない。
恋愛ドラマは見るけれど、自分には関係ないことだと思って見ている。 友達の恋愛話は聞くけれど、どこか他人事として聞いている。 マッチングアプリは興味があるけれど、ダウンロードするまでには至らない。
そんな微妙な距離感で、恋愛というものと付き合っている。
安全な距離から眺める恋愛
この中途半端な位置には、実は居心地の良さもある。
完全に諦めていないから、夢を見ることはできる。 完全に期待していないから、傷つくリスクも少ない。
安全な距離から恋愛を眺めて、「いいなあ」と思ったり「大変そうだなあ」と思ったり。
でも時々、この距離感が寂しくなることもある。傍観者でいることの安全さと、当事者になることの充実感。どちらを選ぶべきなのか分からなくなる。
憧れを否定しなくていい
でも思うのは、憧れを否定する必要はないということ。
「もう恋愛なんてどうでもいい」と無理に思う必要はない。憧れている自分を否定する必要もない。
憧れは、あなたの心が生きている証拠。まだ何かを求めている、まだ希望を持っている証拠。
それは決して恥ずかしいことではない。むしろ、とても人間らしくて、美しいこと。
諦めも一つの智慧
同時に、諦めの気持ちも否定しなくていい。
諦めることで、他のことに集中できるようになった。 諦めることで、一人の時間を充実させることができるようになった。 諦めることで、友情や家族関係をより大切にできるようになった。
諦めは、決してネガティブなだけの感情ではない。時には、前に進むための智慧でもある。
揺れ動く心を受け入れる
憧れと諦めの間で揺れ動く心を、そのまま受け入れよう。
今日は憧れが強い日。 明日は諦めが勝る日。
そんな風に気持ちが変わるのは、当たり前のこと。無理に一つの感情に固定する必要はない。
揺れ動く心も、あなたの一部。その複雑さも含めて、あなたらしさ。
今この瞬間を大切に
憧れと諦めの間にいる今の時間も、あなたの大切な人生の一部。
この曖昧な時間があるからこそ、自分自身と向き合うことができる。自分が本当に求めているものが何なのかを、ゆっくりと考えることができる。
急いで答えを出す必要はない。今の気持ちのまま、今のペースで歩んでいけばいい。
いつか憧れが勝る日が来るかもしれない。 いつか諦めが完全になる日が来るかもしれない。 そのどちらでも、あなたはあなた。
心の声に耳を傾けて
大切なのは、自分の心の声に正直になること。
世の中の「恋愛すべき」という圧力にも、「一人で十分」という考えにも、惑わされる必要はない。
あなたの心が今、何を感じているのか。 何を求めているのか。 何を恐れているのか。
そこに耳を傾けて、あなた自身の答えを見つけていけばいい。
憧れと諦めの間で揺れている今のあなたも、十分に愛おしい存在。その複雑な心も含めて、あなたらしさを大切にしていこう。