恋愛小説の主人公に全く感情移入できない

恋愛小説の主人公に全く感情移入できない

恋愛小説の主人公の行動や感情に共感できずにいる複雑な気持ちについて

読了時間: 5分

書店の恋愛小説コーナーを歩いていると、色とりどりの表紙が目に飛び込んでくる。「胸キュン必至」「涙が止まらない」「最高にときめく」といった帯の言葉。

でも、手に取って読んでみると、いつも同じ感覚に陥る。

主人公の気持ちが、全く理解できない。

「なんでそうなるの?」という違和感

恋愛小説の主人公は、しばしば理解しがたい行動を取る。

運命的な出会いに心を奪われ、相手のことを何も知らないのに「この人だ」と確信する。少し優しくされただけで舞い上がり、少し冷たくされただけで絶望する。相手のために自分を変えようとし、時には大切な友達や仕事を犠牲にする。

読みながら、つい「なんでそうなるの?」と思ってしまう。

私が冷たいのだろうか。ロマンチックな心が足りないのだろうか。それとも、現実的すぎるのだろうか。

恋に落ちる描写への疑問

特に理解できないのが、「恋に落ちる」瞬間の描写。

駅のホームで偶然ぶつかった瞬間に、時が止まる。 カフェで隣の席にいた人の横顔に、心を奪われる。 雨の中で傘を差し出されて、運命を感じる。

でも現実の私は、そんな瞬間に出会ったことがない。

人を好きになるときは、もっとゆっくりで、もっと地味。何度か話しているうちに「この人といると楽しいな」と思ったり、困ったときに助けてもらって「優しい人だな」と感じたり。

一目惚れのドラマチックさよりも、じわじわとした親しみやすさの方が、私にとっては自然に感じられる。

恋愛が最優先になる世界

恋愛小説の世界では、恋愛がすべての中心にある。

主人公は恋のために仕事を疎かにし、友達との約束をキャンセルし、家族との時間を削る。そして、それが美しい自己犠牲として描かれることが多い。

でも私には、その価値観が理解できない。

確かに恋愛は大切。でも人生には他にも大切なことがたくさんある。仕事での達成感、友達との何気ない時間、一人で過ごす静かな夜、新しい知識を得る喜び。

なぜ恋愛だけが特別扱いされるのだろう。

理想化された恋愛像

恋愛小説の恋愛は、あまりにも理想化されている。

相手は常に完璧で、ちょっとした誤解はすぐに解決し、最終的には必ずハッピーエンドが待っている。現実的な問題—金銭感覚の違い、価値観の相違、家族の問題—はあまり描かれない。

私が大学でコミュニケーション学を学んでいたとき、実際の人間関係がどれほど複雑で、時間がかかるものかを学んだ。お互いを理解し合うには、多くの対話と妥協が必要。理想的な関係なんて、そう簡単には築けない。

現実とのギャップが大きすぎて、物語の世界に入り込めない。

感情表現の大げささ

恋愛小説の感情表現は、とても大げさに感じられる。

「心臓がバクバクして、息ができない」 「世界がバラ色に見える」 「彼なしでは生きていけない」

でも実際の恋愛で、そこまで劇的な感情を経験したことがない。

好きな人といると確かに嬉しいし、楽しい。でも、それは静かな幸福感であって、小説に描かれるような激しい感情ではない。

私の感じ方が薄いのだろうか。それとも、小説の表現が現実離れしているのだろうか。

受け身すぎる主人公

多くの恋愛小説の主人公は、とても受け身だ。

相手からのアプローチを待ち、相手の気持ちを推測し、相手に合わせて自分を変えようとする。自分の意志や欲求よりも、相手の反応を優先する。

でも、健全な関係は対等であるべきだと思う。お互いが自分らしさを保ちながら、歩み寄るもの。

主人公の受け身な態度を見ていると、「もっと自分の気持ちを大切にしたら?」と思ってしまう。

私は冷めているのか

こんなふうに感じる自分に、時々不安になる。

友達が恋愛小説を読んで涙を流しているとき、私は冷めた目で見ている自分がいる。みんなが「素敵な恋愛」について語っているとき、どこか距離を感じている自分がいる。

私はロマンチックな心が足りないのだろうか。恋愛に対して期待しすぎていないのだろうか。それとも、恐れすぎているのだろうか。

別の形の愛を求めている

でも最近、気づいたことがある。

私が感情移入できないのは、恋愛小説に描かれる愛の形が、私の求める愛と違うからかもしれない。

私が欲しいのは、お互いを理解し合い、支え合い、一緒に成長していけるような関係。ドラマチックな瞬間よりも、日常の小さな幸せを共有できる関係。

激しい恋ではなく、穏やかで深い愛。

そういう関係を描いた小説は、恋愛小説コーナーには少ないのかもしれない。

あなたらしい恋愛でいい

恋愛小説の主人公に感情移入できなくても、それはあなたがおかしいわけではない。

人それぞれ、愛の形は違う。感じ方も、表現の仕方も、求めるものも。

小説の世界の恋愛が理想的に思えなくても、現実の人間関係を大切にしていけばいい。ドラマチックでなくても、あなたらしい形の愛を育てていけばいい。

自分の感性を信じよう

恋愛小説に描かれる恋愛が「普通」なのではない。それは数ある恋愛の形の一つに過ぎない。

あなたの感じ方、あなたの価値観、あなたの恋愛観は、すべて正しい。無理に小説の世界に合わせる必要はない。

きっと、あなたの求める愛の形を理解し、共有してくれる人がいる。

今日も、あなたらしい感性を大切に、自分の心に正直に過ごしていこう。