また今日も、本当は嫌だと思いながら「はい」と言ってしまった。
頼まれた残業、友達からの相談、誘いたくもない飲み会、面倒な雑用。本当は断りたいのに、「いいよ」「大丈夫」「任せて」という言葉が口から出てしまう。
そして家に帰ってから、一人でぐったりと疲れ果てている。
なぜ私は、こんなにも断るのが下手なのだろう。
断れない理由を考えてみる
断れない理由は、人それぞれ違う。でも、根っこにあるのは同じような気持ちかもしれない。
「嫌われたくない」 「期待に応えたい」 「迷惑をかけたくない」 「いい人だと思われていたい」
これらの気持ちは、決して悪いものではない。むしろ、とても優しくて思いやりのある証拠。
でも、その優しさが自分自身を苦しめることになってしまっている。
私も大学時代、サークルでもアルバイトでも、頼まれごとを断ることができなかった。コミュニケーション学で「アサーション(自己主張)」の重要性を学んでいたのに、実際にはできずにいた。理論と実践の間には、思っている以上に大きな壁があった。
優しさの代償
「優しい人」「頼りになる人」「断らない人」
そんな評価をもらうことで、確かに周りからは好かれる。でもその代償として、自分の時間やエネルギー、そして心の平穏を犠牲にしている。
そして気づいたとき、周りには「何かを頼むときの人」として認識されている自分がいる。本当の友達ではなく、便利な存在として。
これは悲しい現実だけれど、実際によくあることだと思う。
断ることは悪いことじゃない
私たちは小さい頃から「いい子でいなさい」「わがままを言ってはいけません」と教えられてきた。
でも、断ることは決してわがままではない。自分を守るための、正当な権利。
あなたの時間は有限で、エネルギーも有限。それらをどう使うかは、あなた自身が決めていいもの。
すべての要求に応える義務なんて、本当はどこにもない。
小さな「NO」から始めてみる
いきなり大きな断りをするのは難しい。だから、小さなところから練習してみよう。
「今日はちょっと疲れているから、また今度にしない?」 「時間的に厳しいから、他の人にお願いできる?」 「今は余裕がないから、申し訳ないけれど」
最初は心臓がバクバクするかもしれない。罪悪感を感じるかもしれない。でも、思っているほど相手は怒らないし、関係も壊れない。
むしろ、断れる人として一目置かれることもある。
断り方にも優しさを込める
断るときは、冷たくする必要はない。優しく、でもはっきりと断ることができる。
「お声をかけてくださってありがとうございます。でも今回は難しそうです」 「気持ちは嬉しいのですが、今の状況だと無理をしてしまいそうで」 「お役に立てず申し訳ありません」
感謝の気持ちや申し訳ない気持ちを伝えながらも、決意は変わらない。そんな断り方があることを知っておこう。
境界線を引く勇気
人間関係には境界線が必要。
どこまでは受け入れられて、どこからは無理なのか。その線引きを明確にすることは、健全な関係を築くために欠かせない。
境界線のない関係は、一方的な搾取になりやすい。あなたが我慢し続けることで成り立っている関係は、本当の意味での友情ではない。
疲れた自分を責めないで
断れずに疲れ果てている自分を、責める必要はない。
あなたは十分に頑張っている。十分に優しい。十分に周りのことを考えている。
でも、自分のことも同じように大切にしていい。自分の気持ちや体調も、他の人と同じように重要なもの。
本当の友達は理解してくれる
「断ったら嫌われるかもしれない」という不安があると思う。
でも、断ったくらいで離れていく人は、本当の友達ではなかったということ。本当にあなたを大切に思っている人は、あなたの「NO」も受け入れてくれる。
むしろ、「無理しないで」「大丈夫?」と心配してくれるはず。
そうやって、本当に大切な人間関係だけが残っていく。量より質の関係を築けるようになる。
自分を大切にすることから始まる
他の人を大切にするためには、まず自分を大切にすることが必要。
疲れ果てた状態では、本当の意味で誰かの役に立つことはできない。適度に休んで、エネルギーを回復させて、本当に必要なときに力を発揮する。
そんな自分でいられたら、もっと健全で持続可能な人間関係を築けるはず。
今日から少しずつ
今日から、少しずつでいい。完璧である必要はない。
一日に一回でも、小さな「NO」を言えたら、それで十分。その積み重ねが、いつか大きな変化につながる。
断ることは、決して冷たいことではない。自分を大切にし、周りとの健全な関係を築くための、大切なスキル。
あなたにはその権利がある。そして、その勇気を持つ価値がある。
疲れたときは休んでいい。断りたいときは断っていい。
あなたの優しさは、自分自身にも向けられるべきもの。今日から、少しずつでいいから、自分に優しくしてみよう。