優しくされると戸惑ってしまう

優しくされると戸惑ってしまう

人から優しくされたときに素直に受け取れず、戸惑ってしまう心理について

読了時間: 4分

コンビニで手が塞がっているときにドアを開けてもらったり、電車で席を譲ってもらったり、職場でちょっとした手助けをしてもらったり。

そんな何気ない優しさを受けたとき、なぜか素直に「ありがとう」が言えない。心の中でざわざわとした感情が渦巻いて、どう反応していいのかわからなくなってしまう。

この感覚、私だけではないはず。

「なぜ私に?」という疑問

優しくされたとき、最初に浮かぶのは「なぜ私に?」という疑問。

自分に価値があるとは思えないから、他者からの親切を受け取ることに罪悪感を感じてしまう。「もっと必要としている人がいるのでは」「私なんかが受け取っていいのか」そんな思いが頭をよぎる。

私も大学時代、一人でお昼を食べているときに、クラスメイトから「一緒に食べない?」と声をかけられたことがある。その瞬間、嬉しいよりも先に「なぜ私を誘うの?」「何か理由があるの?」という疑いの気持ちが湧いてきてしまった。

素直に喜べない自分が、情けなくて悲しかった。

裏があるのではという不安

優しさに対して身構えてしまうのは、過去に「優しさの裏に何かがあった」経験があるからかもしれない。

条件付きの優しさ。見返りを求める親切。表面的な社交辞令。そんな経験が積み重なると、純粋な優しさに出会ったときも、つい疑ってしまう。

「何か期待されているのでは」 「後で何かお返しを求められるのでは」 「本当は迷惑だと思っているのでは」

そんな不安が、せっかくの優しさを素直に受け取ることを邪魔してしまう。

お返しできない自分への焦り

優しくされると、同じように優しさを返さなければという強迫観念にかられる。

でも、今の自分には相手が望むような形でお返しできる自信がない。そう感じると、優しさを受け取ることそのものが重荷になってしまう。

「迷惑をかけているのでは」 「期待に応えられないのでは」 「がっかりされるのでは」

そんな気持ちが先行して、せっかくの善意を台無しにしてしまう。

優しさに慣れていない心

実は、優しくされることに単純に慣れていないのかもしれない。

家族関係が複雑だったり、友人関係で傷ついた経験があったり、自分を大切にしてもらった記憶が少なかったり。優しさが日常にないと、それを受け取る「受容力」が育たない。

筋肉と同じで、使わないと衰えてしまう。優しさを受け取る心の筋肉も、鍛える必要がある。

私も一人で過ごす時間が長かった分、人からの親切に対してどう反応すればいいのか、本当にわからなかった。「普通の反応」がわからなくて、いつもぎこちなくなってしまった。

自己価値の低さが根底にある

でも、一番の理由は自己価値の低さかもしれない。

「私なんて優しくされる価値がない」「私は誰からも愛されない」そう心の奥底で思っているから、優しさを受けたときに戸惑ってしまう。

自分を大切に思えない人は、他者から大切にされることも受け入れにくい。それは自己イメージと矛盾するから。

優しさは「もらうもの」ではなく「あるもの」

でも、考え方を少し変えてみよう。

優しさは、もらうものでも返すものでもない。この世界にあふれているもの。そして、あなたもその優しさの一部。

誰かがあなたに優しくするのは、あなたに価値があるから。あなたが特別だから。あなたが愛されるに値する存在だから。

そのことを、まず自分自身が信じてみよう。

小さな「ありがとう」から始めよう

いきなり優しさを完璧に受け取れるようになる必要はない。

まずは小さな「ありがとう」から始めてみよう。戸惑いながらでも、ぎこちなくても、その一言を口にしてみる。

相手も、あなたの戸惑いを理解してくれる。完璧なリアクションを求めているわけではない。ただ、その優しさが届いたということを知りたいだけ。

優しさの連鎖を信じてみる

あなたが誰かの優しさを受け取ることで、その優しさは世界に広がっていく。

今日受け取った優しさが、明日あなたが誰かに優しくする原動力になる。そうやって、優しさは連鎖していく。

あなたが優しさを受け取ることは、決して一方的に奪うことではない。むしろ、世界をより優しい場所にする貢献。

あなたには愛される資格がある

最後に、これだけは覚えていてほしい。

あなたには愛される資格がある。 あなたには優しくされる価値がある。 あなたには幸せになる権利がある。

戸惑ってもいい。すぐに慣れなくてもいい。でも少しずつ、自分が愛されるに値する存在だということを信じてみよう。

そうすれば、いつか優しさを自然に受け取れるようになる。そして、その優しさを自然に人に分けてあげられるようになる。

今日誰かから受けた小さな優しさ。それは、あなたが思っている以上に尊いもの。戸惑いながらでも、その贈り物を大切に受け取ってみよう。

あなたの心が、少しずつ優しさで満たされていきますように。