「この人は完璧」
恋をすると、相手がとても素晴らしい人に見える。まるで欠点なんて一つもないような、理想そのものの人に思えてくる。
でも気づけば、その完璧な相手像と現実の相手との間に、大きなギャップが生まれている。そして心のどこかで、期待と違う現実に戸惑っている自分がいる。
理想化したくなる気持ち
相手を理想化してしまうのは、決して悪いことではない。
恋をしているとき、私たちは相手の良いところばかりに目が向く。それは自然なこと。愛情があるからこそ、相手を素晴らしい存在として見たくなる。
特に、日頃から人間関係に疲れていたり、世の中に失望することが多い私たちにとって、恋愛相手は希望の光のような存在。この人だけは違う、この人だけは特別、そう思いたくなる。
私も大学時代、ある人に恋をしたとき、その人を完璧な存在として見ていた。頭が良くて、優しくて、面白くて、すべてが理想通り。この人となら、きっと幸せになれると信じていた。
理想化が生み出す問題
でも、相手を理想化しすぎると、いくつかの問題が生まれる。
まず、現実の相手の行動や言動が理想と違ったとき、強い失望を感じてしまう。小さなことでも「こんな人だと思わなかった」と幻滅してしまう。
そして、理想的な相手だと思うと、自分が釣り合わないような気がして、必要以上に自分を卑下してしまう。「こんな素晴らしい人に、私なんて」という気持ちになる。
さらに、相手を完璧な存在として見ると、相手も完璧であることを求められているプレッシャーを感じるかもしれない。自然体でいることが難しくなってしまう。
現実の人間関係
でも考えてみてほしい。
あなた自身も完璧な人間ではないように、相手も完璧な人間ではない。誰もが長所と短所を持った、複雑で不完全な存在。
そして、本当に深い関係は、お互いの完璧さを愛し合うことではなく、お互いの不完全さを受け入れ合うことから生まれる。
私がかつて理想化していた人は、確かに素晴らしい人だった。でも同時に、頑固なところもあったし、時には自分勝手なところもあった。最初はそれに失望したけれど、今思えば、その不完全さも含めてその人らしさだった。
理想化する自分を責めない
理想化してしまう自分を責める必要はない。
それは、あなたが純粋で真っ直ぐな心を持っている証拠。相手を大切に思っているからこそ、良いところばかりを見てしまう。
ただ、その気持ちと同時に、現実も見ることができるようになれば、もっと健康的な関係を築けるかもしれない。
相手の人間らしさを愛する
完璧な人間なんて、実はちょっとつまらない。
相手の少し抜けているところ、ちょっと子どもっぽいところ、時には落ち込んでしまうところ。そんな人間らしさこそが、愛おしく感じる瞬間になる。
私も今思えば、相手の完璧さよりも、不完全さに惹かれることの方が多かった。真面目すぎる人が時折見せる天然さや、クールな人がふと見せる可愛らしさ。そんな瞬間に、本当の魅力を感じていた。
バランスの取れた見方
相手を理想化しすぎず、でも過度に欠点ばかりに目を向けることもない。そんなバランスの取れた見方ができるようになれば、もっと楽な気持ちで恋愛を楽しめる。
相手の良いところは素直に愛でて、ちょっと気になるところは「そういうところもあるんだな」と受け入れる。
完璧じゃないからこそ、一緒に成長していける。お互いの足りないところを補い合える。そんな関係の方が、長続きするし、深い絆が生まれる。
自分自身も理想化しない
相手を理想化しがちな人は、自分に対しても理想を求めすぎることが多い。
「恋人の前では完璧でいなきゃ」「いつも素敵な自分でいなきゃ」
でも、それもまた疲れてしまう原因になる。
ありのままのあなたで大丈夫。完璧じゃない、でも愛らしいあなたで十分。
期待を手放す勇気
理想化することは、ある意味で相手に対する「期待」でもある。
でも、期待が大きすぎると、現実との差にがっかりしてしまう。時には期待を手放して、相手がどんな人なのかを純粋に観察してみる。
期待していなかった素敵なところが見えてくるかもしれないし、思っていたのと違うけれど、それもまた魅力的だと感じるかもしれない。
今この瞬間の相手を見る
未来の理想の関係ではなく、今この瞬間の相手を見る。
過去の恋愛経験から作り上げた理想像ではなく、目の前にいる現実の相手を見る。
その人は完璧ではないかもしれない。でも、あなたと同じように不完全で、あなたと同じように愛されたいと思っている、一人の人間。
不完全な愛の美しさ
完璧な恋愛なんて、きっとつまらない。
お互いに不完全で、時にはすれ違いもあって、でもそれを乗り越えていく。そんな関係の方が、本当の意味で深く、美しい。
理想化することで失うものもあるけれど、現実を受け入れることで得られるものの方が、きっとずっと大きい。
あなたの恋愛が、理想ではなく現実に根ざした、温かで持続可能なものになりますように。
完璧じゃない相手を、完璧じゃない自分が愛する。それが、本当の恋愛なのかもしれない。