「いつか恋人ができたら」 「いつか自信がついたら」 「いつか準備が整ったら」
この「いつか」という言葉を、私は何度口にしただろう。そしてその「いつか」は、いつまで経ってもやってこない。
安全な避難場所としての「いつか」
「いつか」は、とても便利な言葉だ。
今すぐ行動を起こす必要もないし、具体的な計画を立てる必要もない。ただ漠然と「その時が来れば」と思っていればいい。
でも気づいてしまった。この「いつか」は、実は行動しない自分を正当化するための、安全な避難場所だったということに。
私も大学時代、「いつか留学したい」「いつか大きなプロジェクトに参加したい」と言い続けていた。でも結局、卒業するまでそのどれも実現しなかった。
あとで振り返ると、機会はあった。でも「まだ準備ができていない」「もう少し勉強してから」と理由をつけて、先延ばしにし続けていた。
完璧な準備への執着
「いつか」の背後には、「完璧に準備ができてから」という思い込みがある。
恋愛なら、「もっと魅力的になってから」「もっと自信がついてから」。 転職なら、「もっとスキルを身につけてから」「もっと経験を積んでから」。 新しい趣味なら、「時間に余裕ができてから」「お金が貯まってから」。
でも、完璧な準備なんて存在しない。どんなに準備をしても、実際にやってみなければ分からないことの方が多い。
私がコミュニケーション学を学んでいたとき、頭では「効果的なコミュニケーション」を理解していた。でも実際に人と話すときは、学んだ理論なんて役に立たなかった。
理論と実践の間には、大きな溝がある。その溝は、実際に飛び込んでみることでしか埋められない。
失敗への恐れ
「いつか」に逃げる本当の理由は、失敗への恐れかもしれない。
今行動して失敗したら、「やっぱりダメだった」という現実と向き合わなければならない。でも「いつか」と言っている限り、その可能性すら生まれない。
失敗しない代わりに、成功する可能性も閉ざしてしまう。
私も長い間、人と深くつながることを避けていた。傷つくのが怖かったから。でも傷つくリスクを回避している限り、本当のつながりも生まれなかった。
「今」という瞬間の価値
でも最近、気づいたことがある。
「いつか」を待っている間に、「今」という貴重な時間が過ぎ去ってしまうということに。
20代の「いつか」と30代の「いつか」は、同じではない。環境も、体力も、周りの状況も変わる。今だからこそできることが、きっとある。
そして何より、「今」の自分を受け入れることから、すべてが始まる。
小さな一歩の力
「いつか」から脱出するために必要なのは、大きな決断ではない。小さな一歩だ。
恋愛なら、マッチングアプリに登録してみる。 新しい趣味なら、体験レッスンに申し込んでみる。 人とのつながりなら、一人でもイベントに参加してみる。
完璧である必要はない。準備万端である必要もない。ただ、一歩だけ前に進んでみる。
私も最初は怖かった。でも小さな一歩を重ねるうちに、だんだん行動することに慣れてきた。そして気づいた。行動してみると、想像していたほど怖いことではなかったということに。
失敗も経験のうち
もし失敗したとしても、それは決して無駄ではない。
失敗から学ぶことはたくさんある。自分の限界を知ることもできるし、次はどうすればいいかも分かる。
何より、「やってみた」という事実が、自分への信頼につながる。小さな成功体験の積み重ねが、次の行動への勇気になる。
「いつか」を「今日」に変える
「いつか」という言葉を使いそうになったら、少し立ち止まって考えてみよう。
本当に今はその時ではないのか? もう少し具体的な時期を設定できないか? 今日できる小さなことはないか?
「いつか恋人ができたら」→「今日、一人の人と話してみよう」 「いつか自信がついたら」→「今日、一つだけ新しいことに挑戦してみよう」 「いつか準備が整ったら」→「今日、準備のための第一歩を踏み出してみよう」
あなたは今でも十分素敵
「いつか」に逃げてしまう自分を責める必要はない。
それは慎重で、真面目で、完璧主義なあなたの表れでもある。でも、今のあなたでも十分に魅力的で、十分に価値がある。
完璧になるまで待つ必要はない。今のあなたのままで、小さな一歩を踏み出してみよう。
今日という日を大切に
明日は今日より少し勇気が出るかもしれない。でも、今日という日は二度と戻ってこない。
「いつか」はとても遠いけれど、「今日」はここにある。
あなたの「いつか」を、少しずつ「今日」に変えていこう。きっと想像以上に素敵な発見が待っている。
今日という日を、あなたらしく大切に過ごそう。