また今日も、別人のような自分で彼の前に立った。
明るくて、いつも笑顔で、趣味も彼好みに合わせて。本当は読書が好きなのに「映画が好き」と言ったり、静かな場所が落ち着くのに「にぎやかな場所が好き」と答えたり。
家に帰ると、どっと疲れが押し寄せる。演技をし続けることの、想像以上の疲労感に。
「好かれたい」という気持ちの罠
恋愛において、相手に好かれたいと思うのは自然なこと。でも、その気持ちが強すぎると、いつの間にか「本当の自分」を隠してしまう。
彼が「明るい子が好き」と言えば、無理に明るく振る舞う。 彼が「料理上手な子がいい」と言えば、急いで料理を練習する。 彼が「アウトドア派」だと知れば、本当はインドア派なのに合わせようとする。
一つ一つは小さな嘘。でも、それが積み重なると、まるで違う人格を演じているような感覚になる。
私も大学時代、好きな人ができるたびに「彼好みの自分」になろうとしていた。コミュニケーション学を学んでいたのに、皮肉にも本当のコミュニケーションからは遠ざかっていた。
偽りの自分は持続しない
でも、偽りの自分を演じ続けることには限界がある。
体力的にも精神的にも疲れるし、何より「本当の自分を知られたら嫌われるかもしれない」という不安が常につきまとう。
そして関係が深くなればなるほど、本当の自分を隠し続けることが難しくなる。一緒に過ごす時間が長くなれば、ふとした瞬間に素の自分が出てしまう。
その時、「こんなはずじゃなかった」と思われるのが怖くて、さらに演技を重ねてしまう。悪循環の始まり。
完璧な恋人になろうとする重圧
SNSや恋愛ドラマの影響で、私たちは「完璧な恋人像」に縛られている。
いつも美しく、いつも優しく、いつも理解があって、いつもポジティブで。そんな非現実的な理想に自分を当てはめようとしてしまう。
でも現実の人間は、機嫌が悪い日もあるし、わがままを言いたい日もある。疲れて愚痴を言いたい時もあるし、一人になりたい時もある。
それが普通の人間らしさ。でも、恋愛の場面では、なぜかその普通さを隠してしまう。
相手も偽りの自分を好きになっているかもしれない
そして気づくのは、偽りの自分を好きになってくれた相手も、もしかしたら偽りの自分を演じているかもしれないということ。
お互いに「相手に好かれるため」の仮面をつけて付き合っている関係。それは本当の恋愛と言えるのだろうか。
本当の愛は、お互いの本当の姿を知った上で生まれるもの。表面的な魅力だけでは、深いつながりは築けない。
偽り続けることの代償
自分を偽り続けることの代償は大きい。
まず、精神的な疲労が蓄積する。常に「演技」をしているような状態は、想像以上にエネルギーを消耗する。
そして、自分自身を見失ってしまう。「本当の自分って何だったっけ?」と分からなくなってしまうことも。
さらに、関係が続いたとしても、常に「本当の自分がバレるかもしれない」という不安を抱えることになる。それは決して幸せな恋愛とは言えない。
少しずつ本当の自分を出してみる
でも、急に全てを変える必要はない。
まずは小さなことから、本当の自分を出してみよう。
「実は、こういう本が好きなんだ」 「映画もいいけど、美術館も好きなの」 「たまには一人の時間も必要なタイプなんだ」
こうやって少しずつ本当の自分を伝えてみる。もしそれで距離を置かれるなら、その人はあなたにとって本当に大切な人ではないのかもしれない。
本当の自分を受け入れてくれる人を待つ
私が学んだのは、本当に価値のある関係は、お互いの欠点も含めて受け入れ合えるものだということ。
あなたの内向的な部分も、時々見せる弱さも、ちょっとした頑固さも、すべてを含めて「あなたらしさ」として愛してくれる人。
そんな人との出会いは、偽りの自分を演じ続けていては生まれない。本当の自分を出す勇気があってこそ、本当のつながりが生まれる。
疲れた時は休んでもいい
恋愛のために自分を偽り続けるのに疲れたら、一度立ち止まってもいい。
恋愛がすべてではない。自分らしく生きることの方が、ずっと大切。
一人の時間を大切にして、本当の自分がどんな人なのかを思い出そう。どんなことが好きで、どんな時間が心地よくて、どんな価値観を持っているのか。
そうやって自分自身と向き合う時間が、きっと次の恋愛をより良いものにしてくれる。
あなたはそのままで愛される価値がある
演技をしなくても、あなたはそのままで十分魅力的。
あなたの静かな優しさ、深く考える習慣、一人の時間を大切にする姿勢、それらすべてが誰かにとっての宝物になる。
無理に明るく振る舞う必要はない。無理に積極的になる必要もない。あなたらしいペースで、あなたらしい方法で人と関わっていけばいい。
本物の愛は本物の自分から
今夜、疲れ切ったあなたへ。
もう演技はやめよう。仮面を脱いで、本当の自分として生きよう。
最初は怖いかもしれない。でも、本当の自分を愛してくれる人との出会いは、どんな演技よりもずっと美しい。
あなたはあなたのままで、愛される価値がある。それを信じて、明日からは少しずつ、本当の自分として歩んでいこう。