恋愛感情を持つことへの恐怖心

恋愛感情を持つことへの恐怖心

誰かを好きになることそのものに恐怖を感じてしまう心理と、その気持ちとの向き合い方について

読了時間: 4分

また今夜も、ベッドの中で考えてしまう。

職場の彼がふと見せた笑顔が頭から離れない。優しい声音も、仕事に集中している横顔も。でも同時に、胸の奥に冷たい恐怖がじわりと広がっていく。

この気持ちに名前をつけるのが怖い。

「好き」という感情を認めてしまったら、もう後戻りできないような気がして。

恋愛感情は危険なもの?

いつからか、恋愛感情を「危険なもの」として認識するようになってしまった。

理由はたくさんある。過去に深く傷ついた経験。身近な人の恋愛の破綻を見てきたこと。そして何より、自分の心がコントロールできなくなることへの不安。

恋愛感情は、私たちの理性的な判断を曇らせる。相手のことばかり考えて、自分のことがおろそかになる。期待と不安で一喜一憂して、感情の起伏が激しくなる。

そんな自分になることが、とても怖い。

私も大学時代、コミュニケーション学を学びながら気づいたことがある。人間の感情は、時として論理的思考を上回る力を持つ。恋愛感情は特に、その影響が強い。

だからこそ、無意識に避けてしまうのかもしれない。

脆弱性への恐れ

恋愛感情を持つということは、自分の脆弱性をさらけ出すこと。

相手に対して心を開き、傷つけられる可能性を受け入れること。「私はあなたを必要としています」「私はあなたなしでは完全ではありません」と告白すること。

それはとても勇気のいることだ。

特に、これまで一人で頑張ってきた人にとって。自分の力で問題を解決し、誰にも依存せずに生きてきた人にとって。

恋愛感情を持つことは、その自立した自分を手放すことのように感じられる。

拒絶への恐怖

でも一番怖いのは、やはり拒絶されることかもしれない。

好きになった相手に、その気持ちを受け入れてもらえなかったら。自分の大切な感情が、相手にとっては迷惑でしかなかったら。

考えただけで胸が苦しくなる。

だったら最初から、その感情を持たない方がいい。そう思ってしまうのも自然なこと。

でも、感情は意志でコントロールできるものではない。気づいたら、もうその人のことを考えている。そして気づくたびに、自分の心に蓋をしようとしてしまう。

変化への恐怖

恋愛感情を持つことで、今の自分が変わってしまうことも怖い。

今の生活リズム。今の価値観。今の人間関係。すべてが変わってしまうかもしれない。

そして、もし関係が終わったとき、元の自分に戻れるのだろうか。恋愛を経験する前の、無傷な自分に。

実際には、戻る必要なんてない。経験を通して成長した自分でいいのに、なぜか「元の自分を失う」ような感覚になってしまう。

完璧な自分でいたい気持ち

恋愛感情を持つ自分は、完璧ではない。

思考がまとまらず、時には非論理的になり、相手に依存してしまう。そんな自分を受け入れることができない。

でも考えてみてほしい。完璧でない自分こそが、本当の自分なのではないだろうか。

感情を持つこと、誰かを想うこと、時には混乱すること。それらすべてが人間らしさ。その不完全さを恥じる必要はない。

恐怖心と向き合う方法

恋愛感情への恐怖心を完全になくす必要はない。

その恐怖心も、あなたの大切な感情の一部。それは、あなたが過去に学んだ「自分を守る方法」でもある。

ただ、その恐怖心に支配される必要もない。

小さな一歩から始めてみよう。相手のことを「好き」と心の中で認めることから。その感情を否定せず、でも行動に移す必要もなく、ただ受け入れることから。

感情を持つことそのものは、誰にも迷惑をかけない。あなたの心の中だけの、あなただけの大切な宝物。

恋愛感情の美しさ

恋愛感情は確かにリスクを伴う。でも同時に、人生を豊かにしてくれるもの。

世界が少し明るく見えたり、些細なことに幸せを感じられたり、相手の幸せを自分のことのように願えたり。

その美しい感情を、恐怖のせいで完全に諦めてしまうのは、とても勿体ない。

あなたは強い

恋愛感情を持つことを恐れているあなたは、実はとても強い人。

なぜなら、傷つくリスクを理解しているから。自分の感情の力を知っているから。そして、大切なものを失うことの痛みを知っているから。

その強さがあるからこそ、きっと恋愛感情とも上手に付き合っていける。

今日から少しずつ

今すぐ恋愛に飛び込む必要はない。でも、恋愛感情そのものを敵視する必要もない。

まずは、その気持ちが湧いてきたとき、「ダメ」と否定する代わりに、「そうか、私は誰かを大切に思うことができるんだ」と受け止めてみよう。

それだけで十分。それだけで、あなたの心は少し軽くなる。

恋愛感情は恐ろしいものではない。それは、あなたの心が生きている証拠。あなたが人を愛する力を持っている証拠。

その美しい力を、恐怖のせいで封印してしまわないで。

あなたには、愛する権利も、愛される権利もある。そのことを、忘れないでほしい。