同窓会の写真をSNSで見ていると、胸がざわざわする。
みんなキャリアを積んで、結婚して、子どもができて。大人の女性として堂々と生きているように見える。一方で私は、今でも迷いながら、不安を抱えながら、まるで大学生の頃とあまり変わらない気持ちで毎日を過ごしている。
自分だけが大人になれていないような、そんな焦りを感じることはないだろうか。
「大人」って何だろう
そもそも「大人になる」って、どういうことなのだろう。
年齢を重ねること? 責任を持つこと? 経済的に自立すること? 精神的に安定すること?
私が大学でコミュニケーション学を学んでいた頃、発達心理学の授業で興味深いことを知った。心理学的な「成熟」は、決して一直線に進むものではない。人それぞれのペースがあり、分野によって成長の速度も違う。
でも頭で理解していても、心はそう簡単に納得してくれない。
みんなが持っているように見える「確信」
周りを見渡すと、みんな自分の人生に確信を持っているように見える。
「これが私の道」「これが私の幸せ」と言えるような、揺るぎない軸を持っているように見える。
一方で私は、いまだに「これでいいのかな」「本当にこの道で合ってるのかな」と迷いながら歩いている。人生の重要な決断を前にすると、今でも不安で眠れなくなることがある。
でも、これは本当に「大人になれていない」ということなのだろうか。
迷うことの価値
実は、迷い続けることにも価値がある。
確信を持っている人は、確かに頼もしく見える。でも同時に、新しい可能性に気づきにくくなることもある。一方で迷い続ける人は、常に複数の選択肢を検討し、より良い道を模索し続けている。
私も長い間、自分の優柔不断さを欠点だと思っていた。でも今は、それが慎重さや思慮深さの表れでもあると理解している。
簡単に答えを出さないことは、決して未熟さではない。むしろ、物事の複雑さを理解している証拠かもしれない。
「大人らしさ」という演技
実は、とても「大人」に見える人たちも、内心では迷いや不安を抱えていることが多い。
ただ、それを表に出さないのが上手なだけ。社会が求める「大人らしさ」を演じることに慣れているだけ。
私の友人の一人は、いつもとてもしっかりしているように見えた。でもある日、「実は毎日が不安で、本当にこれでいいのかわからない」と打ち明けてくれた。その瞬間、私は自分だけが未熟なのではないことを知った。
みんな、それぞれの方法で「大人」を演じながら、内心では子どもの頃のような純粋な疑問や不安を抱えて生きている。
感受性の豊かさを失わない
「大人になる」ことが、感情を抑制することや感受性を失うことだとしたら、それは本当に成長と言えるのだろうか。
私は今でも、美しい夕日を見ると涙が出そうになる。好きな音楽を聴くと、胸が高鳴る。小さな親切に出会うと、心から感動する。
これらの感情を「子どもっぽい」と封じ込めることが、果たして成熟なのだろうか。
むしろ、年齢を重ねても豊かな感受性を保ち続けることの方が、真の成熟かもしれない。
自分のペースを大切にする
人それぞれに、成長のペースがある。
早く結婚する人もいれば、時間をかけて自分を見つめる人もいる。 キャリアを第一に考える人もいれば、人間関係を重視する人もいる。 安定を求める人もいれば、冒険を続ける人もいる。
どれも正しい生き方。どれも価値のある選択。
私は長い間、「みんなと同じペースで成長しなければ」と思い込んでいた。でも今は、自分のペースを大切にすることの方が重要だと理解している。
未完成であることの美しさ
日本の美学に「わび・さび」という概念がある。完璧ではない、未完成なものの中にこそ美しさを見出す考え方。
私たちの人生も同じかもしれない。完璧に「大人」になる必要なんてない。いつまでも成長し続ける、未完成の存在として生きることにこそ、美しさがある。
迷いながら、悩みながら、それでも前に進んでいく姿こそが、真の大人らしさなのかもしれない。
内なる子どもを大切に
心理学者のカール・ユングは、「内なる子ども」の重要性について語っている。大人になっても心の中に住んでいる子どもの部分こそが、創造性や純粋さの源泉だと。
もし今、自分が「大人になれていない」と感じているなら、それはあなたの中の「内なる子ども」が健在である証拠かもしれない。
その純粋さを失わずに、でも必要な責任は果たしていく。それが現代を生きる私たちにとっての、新しい大人の在り方なのかもしれない。
今のあなたも十分素敵
「大人になれていない」と感じる自分を責める必要はない。
迷いを抱えながらも誠実に生きているあなた。 完璧ではないけれど、一生懸命なあなた。 時には不安になるけれど、それでも前に進もうとするあなた。
そんなあなたも、十分に素敵で、十分に価値がある。
みんなそれぞれのペースで、それぞれの方法で、少しずつ成長していく。比べる必要なんてない。
今日のあなたは、昨日のあなたより少しだけ成長している。それで十分。
自分だけのペースを大切に、自分だけの「大人」になっていこう。