いつからだろう。気がつくと、誰かを好きになることができなくなっていた。
昔は簡単だった。街で素敵な人を見かけたり、職場や学校で魅力的な人と出会ったりすると、自然と胸がときめいた。その人のことを考えると嬉しくなって、次に会える日が楽しみで仕方なかった。
でも今は、どんなに客観的に「素敵だな」と思う人に出会っても、心が動かない。頭では「この人はきっと良い人だろう」と理解できるのに、感情がついてこない。
まるで心の一部が眠ってしまったみたい。
いつの間にか築いてしまった壁
最初は気づかなかった。いや、気づかないふりをしていたのかもしれない。
仕事が忙しくて恋愛どころじゃない、と自分に言い聞かせていた。今は自分磨きの時期だから、と理由をつけていた。
でも本当は違った。いつの間にか、恋愛感情そのものから身を守るための壁を築いていたのだ。
私が大学でコミュニケーション学を学んでいたとき、人間の防衛機制について学んだ。心が傷つくことを恐れるあまり、感情そのものをシャットダウンしてしまうメカニズム。
まさに今の私がそれだった。
傷つくことへの恐怖
思い返してみると、きっかけはあった。
過去の恋愛で深く傷ついたこと。一方的に想いを寄せて、結果的に拒絶されたこと。大切に思っていた人に裏切られたこと。
そのとき感じた痛みが、あまりにも大きすぎて。「もう二度と、こんな思いはしたくない」と心の奥底で誓ってしまった。
でも、傷つくリスクを避けようとすると、同時に幸せになる可能性も遠ざけてしまう。心を閉ざせば安全だけれど、そこには新しい出会いも、新しい感動もやってこない。
感情の麻痺は自然な反応
恋愛することを忘れてしまったあなたを、責める必要はない。
それは心があなたを守ろうとしている、自然な反応なのだから。過度なストレスや傷つき体験があったとき、心は感情を一時的にシャットダウンすることがある。それは決して異常なことではない。
ただ、その状態が長く続くと、本来感じられるはずの喜びや楽しさまで感じにくくなってしまう。恋愛感情だけでなく、友情や家族愛、趣味への情熱まで薄れてしまうことがある。
私も経験した。何をしても心から楽しめない時期。映画を見ても、美味しいものを食べても、どこか他人事のような感覚。まるで透明なガラス越しに世界を見ているみたいだった。
小さな感情から取り戻す
でも、感情は完全に失われたわけではない。一時的に眠っているだけ。
まずは恋愛感情以外の、小さな感情から取り戻していこう。
お気に入りのカフェで飲むコーヒーの温かさ。 好きな音楽を聴いたときの心地よさ。 ペットや植物への愛おしさ。 友達の優しさへの感謝。
こうした日常の小さな感情を大切にしていると、少しずつ心が柔らかくなっていく。感情の回路が、ゆっくりと動き始める。
自分を許すことから始めよう
「恋愛できない自分はダメだ」と自分を責めないで。
今は休息の時期なのかもしれない。心が回復するまでの、大切な準備期間なのかもしれない。
この時間があったからこそ、次に恋をしたときは、もっと深く、もっと大切に愛することができるのかもしれない。
私も長い間、「なぜ恋愛できないのか」と自分を責めていた。でもあるとき気づいた。恋愛できない時期があったからこそ、自分自身と向き合うことができたのだと。
心の準備ができるまで
恋愛感情を無理に取り戻そうとする必要はない。
心が準備できたとき、自然と感情は戻ってくる。それがいつなのかは分からない。明日かもしれないし、来年かもしれない。でも必ず、その時は来る。
大切なのは、その日が来るまで自分を大切にしていること。心を責めるのではなく、「今は休んでいるのね」と優しく受け入れること。
恋愛以外の愛を育てよう
恋愛だけが愛ではない。
家族への愛、友達への愛、ペットへの愛、趣味への愛、自分自身への愛。たくさんの種類の愛がある。
恋愛感情が眠っている間は、これらの愛を育ててみよう。愛する気持ちを思い出すことができれば、きっと恋愛感情も自然と戻ってくる。
今のあなたも素敵
恋愛していなくても、あなたは十分に魅力的。
むしろ、自分自身と向き合い、内面を豊かにしている今の時期は、将来の恋愛にとってとても大切な準備期間。
焦らないで。急がないで。
あなたの心が準備できたとき、きっと素晴らしい恋愛が待っている。それまでは、今の自分を大切に、今の時間を大切に過ごしていこう。
信じて待っていて
恋愛することを忘れてしまったあなたへ。
それは忘れたのではなく、一時的に心が休んでいるだけ。春が来れば花が咲くように、時が来れば感情も自然と戻ってくる。
その日まで、自分を責めずに、自分を愛して、自分らしく生きていこう。
あなたの心の中には、きっとまだ愛する力が眠っている。その力を信じて、優しく待っていてほしい。