あの時の私は、本当に彼女を信頼していた。
夜中まで続く長電話で、彼への気持ちを打ち明けた。どうアプローチすればいいか、一緒に作戦を練った。彼女は親身になって聞いてくれて、的確なアドバイスをくれた。
まさか、その彼女が私の好きな人と付き合うことになるなんて、思いもしなかった。
信頼していたからこそ話したこと
大学時代の親友だった彼女。
一緒に授業を受け、一緒に昼食を食べ、休日も一緒に過ごした。私にとって、姉妹のような存在だった。
だからこそ、彼への想いも隠さずに話した。どんな些細なことでも相談できる、そんな関係だと思っていた。
「彼ってどんな人が好みなのかな」 「今度のサークルの飲み会で話しかけてみようと思うんだけど、どう思う?」 「もしかして私のこと、どう思ってるのかな」
そんな他愛ない相談から、真剣な悩みまで。彼女はいつも真摯に聞いてくれた。
私は、自分の想いを理解してくれる人がいることが嬉しかった。一人で抱え込まなくていい安心感があった。
アドバイスの真意
今思い返すと、彼女のアドバイスには違和感があった。
「もう少し様子を見た方がいいんじゃない?」 「焦らない方がいいよ」 「彼、今恋愛モードじゃないかもしれない」
当時の私は、彼女が私のことを心配してくれているんだと思っていた。慎重派の彼女らしいアドバイスだと受け取っていた。
でも実際は、私の行動を抑制するためだったのかもしれない。
私が動き出す前に、自分が先に関係を築こうとしていたのかもしれない。
裏切りの瞬間
その日のことは、今でも鮮明に覚えている。
SNSで彼らの写真を見つけた瞬間。仲良く並んで笑っている二人。そして、彼女からの一本の電話。
「実は、話があるの」
震える声で告白された事実。私の好きな人と付き合うことになったということ。
「あなたには先に伝えたくて」 「でも、恋愛って理屈じゃないから」 「ごめんね」
その時の私の気持ちを、言葉で表現するのは難しい。怒りというより、深い悲しみだった。信じていたものが崩れ落ちる感覚だった。
私が一番辛かったこと
彼を取られたことよりも、彼女に裏切られたことよりも、一番辛かったのは、私の純粋な気持ちが利用されたように感じたことだった。
私が素直に話した想い、一緒に考えた作戦、彼への理解を深めるために共有した情報。それらすべてが、彼女の恋愛に活用されたような気がして。
まるで、私が無償で恋愛コンサルタントをしていたようで。
私の大学でのコミュニケーション学の知識も、皮肉に思えた。人の心の動きを学んでいたのに、一番身近な人の心を読めなかった。
友情の修復は可能だったのか
その後、彼女から何度か連絡があった。
「友達でいられない?」 「恋愛と友情は別だから」 「あなたとの友情は大切だから」
でも、私にはもう彼女を信頼することができなかった。
彼女の言葉の裏に何があるのか、いつも考えてしまう。純粋に友達として接することができなくなっていた。
それは彼女だけの問題ではなく、私自身の問題でもあった。一度傷ついた信頼を修復するのは、想像以上に難しいことだった。
その後の人間関係への影響
この経験は、私の人間関係に大きな影響を与えた。
誰かに恋愛相談をすることが怖くなった。心の奥底まで話すことに躊躇するようになった。
でも同時に、人間関係の複雑さも学んだ。友情と恋愛は時として対立し、人は完璧ではないということも。
私自身も、もし同じ状況になったら、同じような選択をしてしまうかもしれない。そう思うと、彼女を一方的に責めることもできなかった。
学んだこと
この経験から学んだことがある。
まず、恋愛相談をする相手は慎重に選ぶべきだということ。共通の知り合いがいる場合は、特に注意が必要。
そして、友情にも様々な形があるということ。すべての友達と、すべてを共有する必要はない。
最後に、人は変わるということ。長い付き合いでも、状況によって関係性は変化する。それを受け入れることも大切。
今の私の恋愛相談スタイル
今の私は、恋愛相談をする時は条件を設けている。
その人に恋愛の利害関係がないこと。 信頼できる人であること。 そして、アドバイスを求めるより、ただ聞いてもらいたい時は、それを明確に伝えること。
一人で抱え込む必要はない。でも、誰に話すかは大切。
あなたへのアドバイス
もしあなたも同じような経験をしたことがあるなら、その痛みはよくわかる。
友情への失望、恋愛への不信、人間関係への恐れ。すべて自然な感情だと思う。
でも、すべての人がそうではない。本当に信頼できる友達は、きっといる。その出会いを信じて、少しずつでも人とのつながりを大切にしていこう。
時間が教えてくれること
あれから数年が経った今、その経験も私の人生の一部として受け入れられるようになった。
辛い経験だったけれど、人間関係の複雑さを学ぶ貴重な機会でもあった。
完璧な友情なんて存在しない。でも、不完全ながらも支え合える関係は存在する。
今度は、もう少し慎重に、でも心を閉ざすことなく、新しい関係を築いていきたいと思っている。
あなたも、過去の経験に縛られすぎず、新しい出会いを大切にしてほしい。
きっと、あなたの気持ちを本当に大切にしてくれる人が見つかるから。