一人の時間を楽しめない罪悪感

「一人の時間を大切にしましょう」「自分と向き合う時間は貴重です」「一人でも楽しめることを見つけて」

そんな言葉を聞くたび、胸が少し苦しくなる。

みんな一人の時間を有意義に過ごしているように見えるのに、私はなぜかその時間を心から楽しめない。そんな自分に対して、なんだか申し訳ない気持ちになってしまう。

「一人でも楽しめる人」というプレッシャー

現代社会では「一人でも楽しめる人」が理想的とされている。

カフェで一人読書を楽しんだり、美術館を一人で巡ったり、映画を一人で観たり。そんな姿がとても素敵に見えて、私もそうありたいと思う。

でも実際やってみると、なんだか心が満たされない。楽しいはずなのに、どこか寂しさが付きまとう。そして「なぜ楽しめないのだろう」と自分を責めてしまう。

まるで一人時間を楽しめないことが、人として未熟であるかのように感じてしまう。

私が大学でコミュニケーション学を学んでいたとき、人間の基本的欲求について学んだ。その中でも「所属欲求」は最も基本的なものの一つ。

つまり、誰かとつながりたい、一緒にいたいと思うのは、人間として自然な感情なのだ。

一人でいることが苦手なのは、決して弱さではない。むしろ、人とのつながりを大切にしたい気持ちの表れ。それを恥じる必要なんてない。

私自身も、一人の時間があると無意識に誰かとの思い出を振り返ったり、友達にメッセージを送りたくなったりする。それは私が人とのつながりを求めているから。とても自然なことなのだ。

SNSで見る「素敵な一人時間」に憧れることがある。

おしゃれなカフェでの読書風景、美しい景色の前での一人旅、丁寧に作られた一人ごはん。

でも、その写真の裏側は見えない。もしかしたらその人も、撮影の瞬間以外は寂しさを感じているかもしれない。完璧に見える一人時間の裏に、同じような気持ちが隠れているかもしれない。

理想的な一人時間を演出することと、本当に一人時間を楽しむことは別物だ。

一人の時間を楽しめない日があっても、それは全然悪いことではない。

体調が悪い日があるように、心にも波がある。人恋しさが強い日、一人でいることが辛い日、誰かと話したくて仕方ない日。そんな日があるのは当たり前。

そういう日は無理に一人時間を楽しもうとしなくていい。素直に「今日は一人でいるのが辛い日」と認めて、友達に連絡してみたり、家族と話してみたり、人の声が聞こえる場所に出かけてみたり。

自分の気持ちに正直でいることの方が、無理に楽しもうとするよりもずっと大切。

でも、一人時間との向き合い方を少しずつ変えていくこともできる。

いきなり「一人で映画を観に行く」とか「一人旅をする」とか、ハードルの高いことを目指さなくていい。

お気に入りのお茶を淹れてゆっくり飲んでみる。好きな音楽を聴きながら部屋を片付けてみる。窓から見える景色をぼんやり眺めてみる。

そんな小さなことから始めてみよう。楽しむというより、まずは「一人でいることに慣れる」ところから。

一人時間だからといって、誰のことも考えてはいけないわけではない。

大切な人のことを思い浮かべながら、その人に送る手紙を書いてみる。友達のことを考えながら、今度一緒にしたいことを計画してみる。家族への感謝の気持ちを思い返してみる。

一人でいても、心の中で誰かとつながっている感覚があれば、それはそれで豊かな時間になる。

寂しさを感じることは、悪いことではない。

寂しさがあるからこそ、人とのつながりの大切さがわかる。一人でいる時間があるからこそ、誰かと一緒にいる時間の温かさを実感できる。

寂しさを否定するのではなく、「今、寂しさを感じているな」と受け入れてみよう。その感情も、あなたの大切な一部だから。

誰かの真似をする必要はない。あなたにはあなたらしい一人時間の過ごし方がある。

それは読書かもしれないし、料理かもしれないし、ただぼーっとすることかもしれない。あるいは、誰かに電話をかけることかもしれない。

「こうあるべき」という固定観念にとらわれず、今の自分が心地よいと感じることを大切にしよう。

一人時間を楽しめないことに罪悪感を感じる必要はない。

あなたは人とのつながりを大切にする、とても優しい人。その気持ちを否定することはない。

一人でいることが苦手なのも、一人時間を楽しめないのも、あなたの個性の一つ。それを受け入れて、自分なりのペースで向き合っていけばいい。

今日一人でいることが辛くても、明日は少し違うかもしれない。そして来月は、今月よりも少しだけ一人時間に慣れているかもしれない。

焦らず、責めず、あなたらしく歩んでいこう。

一人でいることが完璧にできなくても、あなたはあなたのままで十分素敵だから。