引きこもりの期間中、私の頭の中ではとても素敵な恋愛が繰り広げられていた。
運命的な出会い、完璧な理解者、心の支えとなってくれる相手。毎夜毎夜、そんな妄想を重ねながら眠りについていた。
でも現実に外の世界に出てみると、妄想の中の恋愛と実際の人間関係は、驚くほど違っていた。その違いに戸惑い、時には絶望したこともある。
でも今になって思う。あの妄想の時間は、決して無駄ではなかった。
妄想の中では完璧だった
引きこもっていた時期、私の妄想の中の恋愛は完璧だった。
相手は私のことを完全に理解してくれる。私の繊細さも、人見知りも、すべてを「愛らしい」と思ってくれる。会話はいつもスムーズで、沈黙は居心地よく、すれ違いなんて存在しない。
私は妄想の中で、最も魅力的な自分でいられた。気の利いたことを言い、相手を笑わせ、愛される理由がはっきりと分かる自分。
その妄想は、現実逃避だった。でも同時に、理想の関係像を明確にする作業でもあった。
現実は複雑で不完全
実際に人と関わり始めたとき、現実の複雑さに圧倒された。
相手は私の気持ちを察してくれない。私も相手の気持ちが分からない。会話は途切れるし、誤解は生まれるし、時には傷つけ合うこともある。
妄想の中の相手は、いつも私を最優先にしてくれていた。でも現実の人には、それぞれの事情があり、優先順位があり、私だけを見ていてくれるわけではない。
最初はそれが受け入れられなくて、「やっぱり恋愛なんて私には無理」と思った。
妄想と現実のギャップに傷ついた
大学でコミュニケーション学を学んでいたとき、面白いことを知った。
長期間引きこもっていた人ほど、理想化された人間関係のイメージを持ちやすい。それは映画や小説、アニメの影響もあるけれど、実際の人間関係での「慣れ」が不足しているからでもある。
私も例外ではなかった。初めてできた友達に、妄想の中の理想的な関係を求めてしまった。相手が少しでも冷たく感じると、「もう嫌われた」と思い込んだ。
でも、それは相手の問題ではなく、私の期待値の問題だった。
妄想が教えてくれたこと
でも、引きこもり期間中の恋愛妄想は、私に大切なことを教えてくれた。
自分がどんな関係を求めているのか。どんな風に愛されたいのか。どんな風に愛したいのか。
妄想の中で何度も繰り返したシチュエーションは、私の理想の関係性の青写真になった。完全に実現することはなくても、目指すべき方向性を示してくれた。
また、妄想の中で「愛される私」を何度も体験したことで、自分にも愛される価値があるという感覚を育むことができた。それは実際の恋愛で、とても重要な土台になった。
現実の関係の美しさ
現実の人間関係は、妄想ほど完璧ではない。でも、その不完全さの中にこそ、本当の美しさがある。
相手が私を理解してくれないとき、お互いに歩み寄ろうとする努力。 言葉にならない気持ちを、行動で伝えようとする工夫。 すれ違いを乗り越えたときの、より深い絆。
妄想の中では味わえない、現実ならではの喜びがある。
妄想を恥じる必要はない
引きこもり期間中の恋愛妄想を、恥ずかしく思う必要はない。
それは現実逃避でもあったけれど、同時に心の準備期間でもあった。理想を描き、自分の価値を確認し、恋愛への憧れを育てる時間。
私も最初は、「妄想ばかりしていた自分が恥ずかしい」と思った。でも今は違う。あの時間があったからこそ、自分の気持ちを大切にすることを学べた。
妄想から現実への橋渡し
もし今、引きこもり期間中の恋愛妄想と現実のギャップに戸惑っているなら、少しずつ現実に慣れていこう。
最初から完璧な関係を求めなくてもいい。小さな人間関係から始めて、少しずつ「不完全な現実」に慣れていく。
妄想の中の理想は心の奥にしまっておいて、でも現実の関係の中で小さな喜びを見つけていく。時には妄想の中の理想に近づく瞬間もあるはず。
両方とも大切にしよう
妄想も現実も、どちらも大切。
妄想は希望を与えてくれるし、現実は成長させてくれる。妄想で理想を描き、現実で学習し、また新しい理想を描く。そうやって螺旋階段を上るように、少しずつ成熟していく。
引きこもり期間中の恋愛妄想は、決して無駄ではなかった。それは、あなたの心が愛を求めている証拠。そして、いつか現実の恋愛を始める準備をしている証拠。
今は移行期間
もし今、妄想と現実の間で揺れているなら、それは移行期間。決して恥ずかしいことではない。
妄想の中で培った理想を胸に、現実の世界で一歩ずつ歩んでいこう。最初はギャップに戸惑うかもしれないけれど、きっと慣れる。そして現実ならではの喜びを発見できる。
あなたの妄想も、現実への一歩も、すべてが大切な恋愛への道のり。自分のペースで、自分らしく進んでいこう。
妄想の中の理想的な恋愛も、現実の不完全な人間関係も、どちらもあなたを豊かにしてくれる。その両方を大切にしながら、素敵な関係を築いていこう。