部屋の中で恋愛ドラマを見ながら、「いいなあ」とため息をつく。スマホで恋愛小説を読みながら、主人公に自分を重ねてドキドキする。
でも実際には、家から出ることも少ない日々。人との接点もほとんどない。
このギャップを「現実逃避」と呼ぶのは簡単だけれど、その心の内側には、もっと複雑で切ない感情が渦巻いている。
現実逃避という言葉の重さ
「現実逃避」という言葉には、どこか否定的なニュアンスがある。まるで逃げることが悪いことのように。
でも私は思う。時には逃避も必要なのだと。
私自身、大学卒業後にしばらく引きこもっていた時期がある。外の世界が怖くて、人との関わりが重くて、部屋にいることだけが安心だった。その時の私にとって、恋愛への憧れは現実逃避でもあり、同時に希望でもあった。
逃避することで、心が休まることもある。理想を描くことで、生きる活力が湧くこともある。
理想の恋愛像を育む時間
引きこもっている時間は、一見すると無駄に思えるかもしれない。でも実際には、とても貴重な時間でもある。
本を読み、映画を見て、音楽を聴いて、一人で考える。その時間があるからこそ、自分の価値観や恋愛観がじっくりと育まれる。
世間の「モテる・モテない」という価値観に振り回されることなく、本当に大切にしたい関係性について考えられる。表面的な魅力よりも、心のつながりを重視する恋愛観が形成される。
これは決して現実逃避だけではない。むしろ、自分らしい恋愛の基盤を作っている時間なのかもしれない。
完璧な恋愛への憧れ
引きこもり生活の中で触れる恋愛は、どうしても完璧なものが多い。
ドラマの恋愛は美しく、小説の恋愛は感動的で、映画の恋愛はドラマチック。現実の恋愛にある面倒くささや複雑さは、きれいに取り除かれている。
そんな作品に触れ続けていると、無意識のうちに「恋愛とはこうあるべき」という理想像が出来上がる。
でもそれは悪いことではない。高い理想を持つことで、妥協しない恋愛ができる可能性もある。安易に誰かと付き合って傷つくより、じっくりと相手を見極められるかもしれない。
現実との差に苦しむ心
ただ、理想と現実のギャップに苦しむこともある。
「こんな素敵な恋愛がしたいのに、現実では人と話すことすら難しい」 「理想の相手はいるけれど、そんな人に出会える場所にいない」 「こんな自分が恋愛なんてできるのだろうか」
そんな想いが胸の奥で渦巻いて、時には自分を責めてしまう。
私もそうだった。コミュニケーション学を学んでいたのに、実際には人との関わりが苦手。理論では「効果的な関係構築」を理解できても、現実では一歩も踏み出せない。そのギャップに悩んだ。
逃避も生きる戦略の一つ
でも今思えば、あの時の「逃避」は、私にとって必要な時間だった。
外の世界が辛すぎて、心が疲れ切っていた時期。無理に現実と向き合おうとしても、きっと更に傷ついていただけ。
恋愛への憧れという形での現実逃避は、私の心を支えてくれた。「いつか素敵な恋愛ができるかもしれない」という希望が、絶望から救ってくれた。
逃避することで、心の傷が癒える時間があった。そして少しずつ、現実と向き合う準備ができるようになった。
段階的な現実との接点
現実逃避から抜け出すには、急激な変化は必要ない。
まずは小さな現実との接点から始めればいい。
コンビニの店員さんと目を合わせてみる。散歩中に犬を連れた人に微笑みかけてみる。オンラインで同じ趣味の人とやり取りしてみる。
これらは恋愛とは程遠いかもしれない。でも、人とのつながりの第一歩。理想の恋愛に近づくための準備段階。
理想を手放さずに現実を受け入れる
大切なのは、理想を完全に手放すことではない。
理想は理想として大切に持ちながら、現実とのバランスを取ること。完璧な恋愛を求めながらも、不完全な現実を受け入れること。
実際の恋愛には、ドラマや小説にはない面倒さもある。でもその代わりに、作り物では得られない温かさもある。
相手の寝癖を見て微笑んだり、些細な喧嘩の後に仲直りしたり、一緒にコンビニ弁当を食べたり。そんな日常の中にこそ、本当の愛おしさがある。
あなたのペースで大丈夫
現実逃避をしている自分を責める必要はない。
今はその時期なのかもしれない。心が現実と向き合う準備ができるまで、理想の世界で心を休めていればいい。
でも忘れないでほしい。あなたが憧れている恋愛は、決して手の届かないものではないということを。
形は違うかもしれない。完璧ではないかもしれない。でもあなたなりの素敵な恋愛は、きっと可能。
今この瞬間も価値がある
引きこもって恋愛に憧れている今この瞬間も、あなたの大切な人生の一部。
その時間があったからこそ、あなたの感性は豊かになった。恋愛への純粋な憧れが育まれた。自分と向き合う力がついた。
いつか恋愛をするときに、その経験がきっと活かされる。深く愛することのできる人になっているはず。
現実逃避をしている自分を恥じることはない。でも時々、外の世界に目を向けてみよう。あなたの理想の恋愛に近づくために、小さな一歩を踏み出してみよう。
ゆっくりでいい。あなたのペースで。あなたなりの方法で。
憧れ続けることも、現実に向かうことも、どちらもあなたの自由。大切なのは、自分の気持ちに正直でいることだから。