部屋の窓から外を眺めながら、ふと思うことがある。
昔の私が求めていた恋愛と、今の私が想像する恋愛は、まったく違うものになっている。ひきこもり生活が長くなるにつれて、恋愛に対する考え方が静かに、でも確実に変わってきた。
最初の頃の恋愛観:刺激的な恋愛への憧れ
ひきこもり始めたばかりの頃、私が憧れていたのは、ドラマや映画のような恋愛だった。
偶然の出会い、運命的な瞬間、情熱的な恋愛、ドキドキする駆け引き。外の世界との接点が少なくなった分、フィクションの恋愛がリアルに感じられた。
「いつか素敵な人が現れて、私をこの部屋から連れ出してくれるかもしれない」
そんな幻想を抱いていた。王子様願望とでも言うのか、誰かが私を救ってくれることを期待していた。
私が大学でコミュニケーション学を学んでいた頃の恋愛観も、どこか理論的で理想的だった。「効果的なコミュニケーションで理想の関係を築く」なんて考えていた。
現実との距離を感じ始める
でも、ひきこもり生活が続くにつれて、その恋愛観と現実の自分との距離を感じるようになった。
「ドラマのような恋愛をするには、まず外に出なければならない」 「運命の出会いを待つより、日常的な出会いを大切にすべき」 「情熱的な恋愛の前に、普通の人間関係さえ築けていない」
理想と現実のギャップに、時には落ち込むこともあった。
静かな恋愛への憧れ
時間が経つにつれて、求める恋愛のスタイルが変化していった。
刺激的で情熱的な恋愛よりも、静かで穏やかな関係に憧れるようになった。一緒にいて安心できる人、無理をしなくていい人、お互いの時間を尊重し合える人。
家で一緒に本を読んでいるだけで幸せを感じられるような関係。会話がなくても気まずくない関係。相手のペースに合わせすぎず、でも思いやりを持って接し合える関係。
これは、一人の時間の価値を知ったからこその変化だった。
相手への期待値の変化
以前は相手に完璧さを求めがちだった。
イケメンで、優しくて、頭が良くて、経済力があって、私を理解してくれて…。まるでスペック表のような条件を頭に描いていた。
でも今は、そんな完璧さよりも「相性」や「居心地の良さ」を重視するようになった。
見た目や職業よりも、一緒にいて疲れない人。価値観を押し付けない人。お互いの弱さも受け入れ合える人。
それは、自分自身も完璧ではないことを受け入れたからかもしれない。
恋愛のタイミングへの考え方
昔は「早く恋愛しなければ」という焦りがあった。
周りの友達が次々と恋人を作ったり、結婚したりする中で、自分だけが取り残されているような気分になった。恋愛をしていない自分は、何か欠けている人間のように感じていた。
でも今は、恋愛にも「その人なりのタイミング」があることを理解している。
無理に時期を早めても、準備ができていなければ良い関係は築けない。むしろ、一人の時間で自分を知り、自分を受け入れることができてからの方が、健全な恋愛ができるのではないかと思う。
オンライン恋愛への理解
以前は「オンラインの出会いは本物ではない」と思い込んでいた。
「やっぱり実際に会って、直接話さないと」と考えていた。でも、ひきこもり生活を通してオンラインコミュニケーションの価値を知った。
文字でのやり取りだからこそ見える相手の内面がある。時間をかけてゆっくりと関係を築けるメリットがある。物理的な距離に関係なく、心の距離を縮められる可能性がある。
もちろん、最終的には実際に会うことも大切だけれど、オンラインから始まる関係も一つの形だと受け入れられるようになった。
自立への価値観
昔は「誰かに頼りたい」「誰かに支えてもらいたい」という気持ちが強かった。
恋愛相手に経済的にも精神的にも依存することを、当然のように考えていた。でも、一人で過ごす時間が長くなって、自立の大切さを実感するようになった。
経済的にも精神的にも、まずは自分で自分を支えられるようになりたい。その上で、お互いが自立した関係として恋愛を楽しみたい。
依存ではなく、相互支援。一人でも大丈夫だけれど、一緒にいるとより豊かになれる関係。
小さな幸せへの感度
大きなイベントや特別な出来事よりも、日常の小さな幸せに価値を見出すようになった。
一緒に散歩をしたり、同じ映画を見たり、何気ない会話を楽しんだり。そんな些細な瞬間に幸せを感じられる恋愛観に変化していった。
これは、一人の時間の中で小さな幸せを見つける練習をしてきたからこその変化かもしれない。
恋愛への準備としてのひきこもり期間
今振り返ると、ひきこもり期間は恋愛への準備期間だったのかもしれない。
自分と向き合い、自分の価値観を整理し、本当に大切なものを見つける時間。そして、一人でいることの価値も、誰かと一緒にいることの価値も、両方を理解する時間。
急いで恋愛に飛び込んでいたら、気づけなかったことがたくさんある。
これからの恋愛への向き合い方
今の私の恋愛観は、以前よりもずっと現実的で、でも温かいものになった。
完璧な恋愛を求めるのではなく、お互いの不完全さも含めて受け入れ合える関係を築きたい。刺激的である必要はないけれど、お互いにとって安心できる場所でありたい。
そして何より、恋愛をしていない今の自分も、恋愛をするかもしれない未来の自分も、どちらも大切にしたい。
ひきこもり女性の恋愛観の変化は、決してネガティブなものではない。むしろ、より深く、より現実的で、より自分らしい恋愛観へと成熟していく過程。
その変化を恥じる必要はない。あなたの今の恋愛観は、あなたが歩んできた道のりの大切な成果なのだから。