「いい人がいれば」と言い続ける日々

「いい人がいれば」と言い続ける日々

「いい人がいれば恋愛したい」と言いながら、なかなか踏み出せない心理について

読了時間: 5分

「恋人はほしいの?」

そう聞かれるたび、私は決まって同じ答えを返す。

「いい人がいれば、ね」

この言葉を何度言ったことだろう。そして何度、心の奥で自分に嘘をついていると感じたことだろう。

安全な逃げ道としての「いい人がいれば」

「いい人がいれば」という言葉は、とても便利だ。

恋愛に興味がないわけではないことを示しながら、同時に今恋人がいない理由も説明できる。まるで「条件さえ揃えば、いつでも恋愛する準備はできている」と言っているみたい。

でも本当は違う。

私がこの言葉を使うとき、実は「でも、そんな完璧な人はいないだろうから、このまま一人でいても仕方ない」という気持ちが隠れている。

それは諦めでもあり、安全地帯への逃避でもある。

「いい人」の基準は雲の上にある

では、私の考える「いい人」って何だろう。

優しくて、誠実で、ユーモアがあって、経済的に安定していて、価値観が合って、見た目もそれなりで、家族思いで、将来性があって…

リストを作り始めると、どんどん長くなる。そして気がつく。こんな完璧な人、存在するのだろうか。

私が大学でコミュニケーション学を学んでいたとき、ある教授が言った言葉を思い出す。

「完璧な相手を探している人は、実は恋愛したくないのかもしれない。なぜなら、完璧な人間など存在しないから」

その時は反発を感じた。でも今思えば、図星だった。

理想を高く設定する本当の理由

なぜ私たちは、手の届かないほど高い理想を設定してしまうのだろう。

それは、傷つくことを避けるため。

理想が高ければ、誰とも付き合わなくて済む。誰とも付き合わなければ、傷つくこともない。フラれることもないし、騙されることもないし、失恋の痛みを味わうこともない。

「いい人がいれば」は、私たちが自分自身に作った、優しい檻なのかもしれない。

実際に現れたらどうするのか

時々想像してみる。もし本当に、私の理想にぴったり合う人が現れたら、どうするだろう。

きっと私は、新しい理由を見つけて躊躇する。

「でも、私にはもったいないかも」 「もっと相手のことを知ってから」 「今は仕事が忙しいし」

理想の人が現れても、今度は自分が理想の相手にふさわしくないという新しい問題が生まれる。結局、また同じ場所に戻ってしまう。

完璧でない人との出会いの価値

私には昔、「完璧ではない」と思った人とのエピソードがある。

その人は私の理想リストの半分も満たしていなかった。でも、なぜか一緒にいると楽しかった。笑わせてくれるし、真剣に話を聞いてくれるし、時には私の知らない世界を教えてくれた。

その時気づいた。恋愛における「良さ」は、チェックリストでは測れない。むしろ、予想外の魅力や、一緒にいる時の心地よさの方が大切なのかもしれない。

結局その人とは何も始まらなかった。私が「でも、この人は理想的じゃない」と考えすぎてしまったから。今思えば、もったいないことをした。

「今ここにいる人」を見てみよう

「いい人がいれば」と言い続けている間に、実は身近にいる「普通にいい人」を見逃しているかもしれない。

完璧ではないけれど、誠実な人。 外見は理想的じゃないけれど、優しい人。 お金持ちではないけれど、一生懸命働いている人。

彼らは私の理想リストにはないかもしれない。でも、もしかしたら一緒にいて幸せになれる人かもしれない。

恋愛は実験的なもの

恋愛は、机上の計算ではない。実際に体験してみなければ分からないことばかり。

相性は、頭で考えるものではなく、心で感じるもの。 愛情は、条件を満たすから生まれるものではなく、時間をかけて育つもの。 幸せは、完璧な人といるから感じるものではなく、不完全な者同士が支え合うから生まれるもの。

小さな一歩から始めてみる

「いい人がいれば」の呪文を、少し変えてみよう。

「少しでも気になる人がいれば」 「話していて楽しい人がいれば」 「一緒にいて安心できる人がいれば」

ハードルを少し下げるだけで、世界は変わって見える。そして意外な発見があるかもしれない。

自分も「いい人」になる努力を

相手に完璧を求める前に、自分はどうだろう。

私は相手の理想の女性になれているだろうか。優しくて、理解があって、魅力的で、一緒にいて楽しい人になれているだろうか。

もしかしたら、お互いに「完璧ではないけれど、それなりにいい人」として出会い、一緒に成長していくことが、本当の恋愛なのかもしれない。

今日から少しずつ

「いい人がいれば」と言うのをやめる必要はない。でも、その「いい人」の定義を、少しだけ現実的にしてみよう。

そして何より、目の前にいる人たちを、先入観なしに見てみよう。

あなたの理想の王子様は、意外と身近なところで、普通の顔をして微笑んでいるかもしれない。

「いい人がいれば」という言葉の向こう側に、本当はどんな気持ちが隠れているのか。今日、一人になった時に、静かに自分に聞いてみよう。

答えは、きっとあなたの心の中にある。