愛されるために自分を偽るのは正しい?

愛されるために自分を偽るのは正しい?

好きな人に愛されるために自分を偽ることについて、その心理と向き合い方を考える

読了時間: 5分

また今日も、本当の自分とは違う自分を演じてしまった。

好きな人の前で、彼が好きそうな話題を振り、彼が好みそうな反応をして、彼が理想とするような女性を演じている。家に帰って一人になると、ふと思う。

これって正しいことなのだろうか。

みんな少しずつ偽っている

正直に言えば、私たちは誰でも多かれ少なかれ自分を偽っている。

職場では「できる人」を演じ、家族の前では「良い娘」を演じ、友達の前では「楽しい人」を演じる。それは社会で生きていく上で、ある程度必要なこと。

恋愛でも同じかもしれない。相手に好かれたくて、少し背伸びをしたり、良い面だけを見せようとしたり。

でも、その「少し」が段々大きくなって、気がついたら本当の自分が分からなくなってしまうことがある。

私が経験した「演じる疲れ」

大学時代、好きな人がいた。彼は活発で社交的で、いつも人に囲まれているような人だった。

私は本来、一人の時間が好きで、読書や映画鑑賞といった静かな趣味を持つタイプ。でも彼の前では、パーティーが好きで、アウトドアも楽しめるような女性を演じていた。

最初のうちは楽しかった。新しい自分を発見できたような気がして。でも段々と疲れてきた。常に「彼好みの自分」でいることに、息苦しさを感じるようになった。

そして気づいた。これは本当の愛されることなのだろうか、と。

偽りから生まれる関係の脆さ

愛されるために自分を偽ることの問題は、その関係が砂上の楼閣になってしまうこと。

相手が愛しているのは「本当のあなた」ではなく、「あなたが演じているキャラクター」。だから、ふとした瞬間に本当の自分が顔を出すと、相手は戸惑ってしまう。

「あれ?君ってこんな人だったっけ?」

その言葉を聞いたとき、心が締め付けられるような思いをする。そして、もっと上手に演じなければと自分を追い込んでしまう。

でも、いつまでその演技を続けられるだろう。一生偽り続けることなんて、きっと無理だ。

でも、少しの背伸びは悪くない

だからといって、相手に合わせることがすべて悪いわけではない。

好きな人の影響で新しいことにチャレンジしたり、今まで興味のなかった分野に関心を持ったり。それは自分の世界を広げてくれる素晴らしいこと。

私も恋をするたび、少しずつ成長してきた。相手のことを知りたくて読んだ本、一緒に行きたくて挑戦したスポーツ、会話を楽しくするために覚えた話題。

それらは決して無駄ではなかった。たとえその恋が実らなくても、新しい自分の一部になった。

「偽る」と「成長」の境界線

では、「偽る」と「成長」の境界線はどこにあるのだろう。

私が思うに、それは「無理をしているかどうか」だ。

新しいことにチャレンジするのは成長。でも、本来の自分を完全に否定して別人になろうとするのは偽り。

相手に合わせて努力するのは愛情。でも、相手に嫌われることを恐れて本心を隠し続けるのは偽り。

そして何より、「これをやめたら嫌われるかもしれない」という恐怖で行動しているなら、それは健全な関係とは言えない。

本当の自分を愛してくれる人を待つ勇気

大学でコミュニケーション学を学んでいたとき、印象的な言葉を聞いた。

「本物の愛は、相手を変えようとしない。ありのままを受け入れる」

もちろん、お互いに成長し合う関係は素晴らしい。でも、それは「変わらなければ愛さない」という条件付きの愛とは違う。

本当にあなたを愛してくれる人は、あなたの静かな面も、不器用な面も、時には頑固な面も含めて愛してくれる。あなたが無理をして演じる必要のない相手。

そんな人に出会うまで、一人でいる勇気も時には必要なのかもしれない。

自分らしさを大切にしながら歩み寄る

でも、完全に自分を変えないということでもない。大切なのは、バランス。

自分の核となる部分、絶対に譲れない価値観は守りながら、表現の仕方や相手への思いやりは学んでいく。

例えば、内向的な性格は変える必要がない。でも、相手に自分の気持ちを伝える方法は学べる。

読書が好きという趣味は隠す必要がない。でも、相手も楽しめるような話題の提供は工夫できる。

あなたの価値は変わらない

どんなに自分を偽っても、どんなに相手に合わせても、あなたの根本的な価値は変わらない。

あなたの優しさ、思いやり、誠実さ。それらは演技では作れない、本物の魅力。

もし今、誰かのために自分を偽っているなら、少し立ち止まって考えてみて。それは本当に必要なことなのか、自分らしさを失ってまで得たい愛なのか。

段階的に本当の自分を見せていく

いきなりすべてをさらけ出す必要はない。信頼関係を築きながら、少しずつ本当の自分を見せていけばいい。

相手がそれを受け入れてくれるなら、その関係は本物かもしれない。もし受け入れてもらえないなら、その人とは縁がなかったということ。

どちらにしても、あなたが悪いわけではない。

愛されるために自分を偽ることは、短期的には効果があるかもしれない。でも長期的には、あなた自身を苦しめることになる。

本当の幸せは、ありのままのあなたを愛してくれる人と築く関係の中にある。

その出会いを信じて、まずは自分自身を大切にしていこう。あなたらしさこそが、最大の魅力なのだから。