カレンダーをめくるたび、時計の針が進むたび、心の中でカウントダウンが始まる。
「もう何ヶ月?」「もう何年?」
外の世界から距離を置いている間に、時間だけが容赦なく過ぎていく。同世代の友人たちは就職し、結婚し、子どもを産み、キャリアを積んでいく。
私だけが取り残されているような、そんな焦りに胸が締め付けられる。
時間への恐怖
引きこもり期間が長くなると、時間に対する感覚が変わってくる。
一日一日はゆっくりと過ぎるのに、気がつけば季節が変わり、年が明け、また誕生日がやってくる。日々の変化は小さくても、振り返ってみると膨大な時間が過ぎている。
「この時間、何をしていたんだろう」 「みんなが積み重ねているものを、私は何も積み重ねていない」
そんな思いが、焦りをさらに大きくしてしまう。
私も大学を卒業してから、しばらくは似たような状況だった。就職活動に失敗し、そのまま家にいる日々が続いた。最初は「少し休もう」と思っていたのに、気がつけば半年、一年と時間が過ぎていた。
社会との距離感
引きこもり期間が長くなると、社会との距離がどんどん広がっていく気がする。
流行についていけない。新しい技術や文化に取り残される。同世代の人たちとの共通の話題がなくなっていく。
「今さら外に出ても、私は浮いてしまうのではないか」 「みんなと同じ土俵にもう立てないのではないか」
そんな不安が、さらに外の世界から足を遠ざける悪循環を生んでしまう。
女性特有の焦り
女性の場合、年齢に対する社会の眼差しは、時に厳しく感じられることがある。
恋愛、結婚、出産といったライフイベントには、見えないタイムリミットが存在するような圧迫感。「適齢期」という言葉の重さ。
引きこもっている間にも、その「時計」は進み続けている。そのことを思うと、焦りは恐怖に近い感情になることもある。
でも、その焦りは本当に必要なものだろうか。
焦りの正体を見つめる
焦りの正体を少し掘り下げてみよう。
それは本当に「遅れている」という事実から来るものなのか。それとも、他人との比較から来るものなのか。社会の期待から来るものなのか。
多くの場合、焦りは「○歳までには○○していなければいけない」という思い込みから生まれている。でもその思い込みは、本当にあなた自身の価値観なのだろうか。
私も長い間、「みんなと同じペースでいなければいけない」という呪縛にかかっていた。でも気づいたのは、人生には決まった正解なんてないということ。
引きこもり期間にも意味がある
引きこもり期間は、決して無駄な時間ではない。
その間、あなたは自分と向き合っていた。本を読み、映画を見て、音楽を聴いて、考えを深めていた。傷ついた心を癒し、エネルギーを蓄えていた。
世界の複雑さや理不尽さに気づき、自分なりの価値観を築いていた。これらはすべて、外の世界では得られない貴重な経験。
比較することの無意味さ
「同世代の○○さんはもう管理職になっている」 「○○ちゃんはもう結婚して子どもがいる」
こうした比較は、焦りを生むだけで何の意味もない。
人それぞれ、歩むペースも道筋も違う。早く走る人もいれば、ゆっくり歩く人もいる。立ち止まる時期があってもいいし、回り道をしてもいい。
重要なのは、他人のペースではなく、自分のペース。
小さな一歩を大切にする
焦りを感じているということは、「動きたい」という気持ちがあるということ。その気持ちを大切にしながら、でも無理をしすぎないように。
今日は窓を開けて外の空気を感じてみる。 明日は少しだけ散歩してみる。 来週はコンビニに行ってみる。
小さな一歩でも、確実に前に進んでいる。その積み重ねが、いつか大きな変化につながる。
焦りと上手に付き合う
焦りを完全になくすことはできないかもしれない。でも、焦りと上手に付き合うことはできる。
焦りを感じたときは、まず深呼吸。そして自分に問いかけてみる。
「本当に急ぐ必要があるのか?」 「この焦りは、誰のための焦りなのか?」 「今の自分にできる一番小さなことは何か?」
焦りは時として行動のエネルギーになるけれど、時として行動を麻痺させてしまう。適度な焦りは大切にし、過度な焦りは手放していこう。
あなたの時間軸で生きる
世間の時間軸と、あなたの時間軸は違う。
遅咲きの花だって美しい。人生に「遅すぎる」ということはない。20代で花開く人もいれば、30代、40代、50代で新しいスタートを切る人もいる。
大切なのは、いつ始めるかではなく、始める気持ちがあるかどうか。
引きこもり期間は準備期間
もしかしたら、この引きこもり期間は、次のステージへの準備期間だったのかもしれない。
蝶が美しく羽ばたくためには、さなぎの中で時間をかけて変化する必要がある。あなたも今、内側で大きな変化を準備しているのかもしれない。
焦らず、でも諦めず
引きこもり期間が長いことで感じる焦り。その気持ちは自然なもの。でも、その焦りに支配される必要はない。
あなたにはあなたのペースがある。あなたにはあなたの人生がある。
今日という日を大切に、明日への小さな希望を持ち続けて。焦らず、でも諦めずに。
時間は確かに過ぎていく。でもあなたの人生は、今からでも充分に輝かせることができる。
長い引きこもり期間の後に、素晴らしい第二の人生を歩んでいる人たちはたくさんいる。あなたも、その一人になれる。