引きこもり期間中に読んだ恋愛本の効果

引きこもり期間中に読んだ恋愛本の効果

外との接点が少ない時期に読んだ恋愛関連書籍が実際にもたらした変化と気づきについて

読了時間: 5分

引きこもっていた2年間で、恋愛本を40冊以上読んだ。

心理学の本から実践的なテクニック本まで、Amazon で評価の高いものは片っ端から。レビューを読み込み、中古本を買い漁り、ときには電子書籍で夜中に読み続けた。

実際に恋愛をしていないのに恋愛本を読むなんて、と思われるかもしれない。でも今振り返ると、あの時期の読書体験は思っていた以上に大きな意味があった。

なぜ恋愛本を読み始めたのか

引きこもりが始まったのは、大学を卒業した後の就職活動に失敗したから。人との関わりに疲れて、気がつけば家から出ることすら億劫になっていた。

でも、心のどこかでは「いつかは誰かと出会いたい」「恋愛したい」という気持ちがあった。現実逃避だったのかもしれない。でも、その気持ちは嘘じゃなかった。

最初に手に取ったのは『なぜあの人は人を惹きつけるのか』という心理学寄りの本だった。恋愛テクニックというよりは、人間関係の本質について書かれていて、引きこもりの私にも読みやすかった。

理論武装という安心感

恋愛本を読んでいると、妙な安心感があった。

「こういう時はこう言えばいい」「この心理を理解すれば大丈夫」「このステップを踏めば関係は発展する」

実際の恋愛経験はゼロに近い私でも、理論的には「恋愛について詳しい人」になれた気がした。大学でコミュニケーション学を学んだ経験も相まって、恋愛を「学問」として捉えることで、漠然とした不安から逃れられた。

でも今思えば、これは逃避でもあったけれど、同時に必要な準備期間でもあった。

意外に実用的だった部分

実際に人と関わるようになってから気づいたのは、恋愛本で学んだことの一部は本当に役に立つということ。

特に:

  • 相手の話をよく聞くことの大切さ
  • 共感を示す方法
  • 自分の気持ちを適切に伝える方法
  • 相手のペースを尊重すること

これらは恋愛だけでなく、あらゆる人間関係で重要なスキル。引きこもり中に理論として学んでいたことが、実際のコミュニケーションでベースになった。

理想が高くなりすぎた弊害

一方で、恋愛本を読みすぎたことの弊害もあった。

本に書かれている「理想的な恋愛」や「完璧なコミュニケーション」を基準にしてしまい、現実の不完全な人間関係に違和感を覚えるようになった。

「この人は私の話をちゃんと聞いてくれない」 「この展開は本に書いてあったパターンと違う」 「もっとロマンチックな出会いがあるはず」

本の知識が、かえって現実の恋愛を難しくしてしまった部分もある。

自分を客観視する力がついた

でも、長期間にわたって恋愛心理学を学んだおかげで、自分の感情や行動パターンを客観視する力がついた。

「今、私は不安になっているから相手に依存的になろうとしている」 「この嫉妬は、私の自信のなさから来ている」 「相手のこの行動は、愛情表現のスタイルの違いかもしれない」

こういう風に自分を分析できるようになったのは、確実に恋愛本のおかげ。感情に振り回されすぎることが減った。

恋愛への憧れが整理された

引きこもり中の読書で、自分が恋愛に求めているものが明確になった。

表面的な「モテテクニック」よりも、深いつながりを重視したいこと。 短期的な刺激よりも、長期的な安定を大切にしたいこと。 相手を変えようとするよりも、お互いを受け入れ合える関係を築きたいこと。

実際の経験がないからこそ、純粋に「理想」を追求できた。その理想は、後に実際の恋愛で大きな指針になった。

本だけでは分からないことも多かった

もちろん、本だけでは分からないことも山ほどあった。

実際の人との化学反応。 予想外の展開への対処法。 文字では表現できない微妙な空気感。 相手によって全く異なる反応。

これらは、実際に人と関わってみないと絶対に分からない。本の知識だけで恋愛ができると思っていた自分は、やはり甘かった。

バランスが大切だった

結局のところ、恋愛本は「予習」としては有効だけれど、「実践」なしには意味がない。

でも逆に、全く準備なしに恋愛の世界に飛び込むよりも、ある程度の基礎知識があった方が心の準備ができる。

私の場合、引きこもり期間中の読書があったからこそ、人との関わりを再開するときの不安が少し和らいだ。「最低限のことは知っている」という自信が、小さな一歩を踏み出す勇気につながった。

引きこもり中の自分へのエール

もし今、同じような状況にいる人がこれを読んでいるなら、言いたいことがある。

恋愛本を読んでいる自分を恥じることはない。それは、諦めていない証拠。まだ希望を持っている証拠。

ただし、本だけで満足しないで。いつかは、小さくてもいいから実際の一歩を踏み出してほしい。本の知識は、その時にきっと役に立つから。

今だからこそ分かること

実際に恋愛を経験した今だからこそ分かるのは、引きこもり期間中の読書は決して無駄ではなかったということ。

その時期があったからこそ、自分の価値観が明確になった。理想の関係性について深く考えることができた。そして何より、恋愛への憧れを失わずにいられた。

遠回りだったかもしれないけれど、必要な道のりだった。

もし今、同じような状況にいる人がいるなら、その時間も大切にしてほしい。でも、いつかは本を閉じて、現実の世界に向かう日が来ることも忘れないでほしい。

あなたの恋愛も、きっと始まる。その準備は、もうできている。