好きな人の前に立つと、なぜか別人になってしまう。
普段の自分とは違う声のトーンで話し、興味のない話題に興味深そうにうなずき、本当は苦手なことも「大丈夫」と言ってしまう。
後になって一人になると、「なんであんなことを言ったんだろう」と後悔する。でも、また同じ人の前に立つと、同じように自分を偽ってしまう。
この繰り返しに、疲れてしまうことがある。
嫌われるのが怖いから
自分を偽ってしまう一番の理由は、きっと「嫌われたくない」という気持ち。
本当の自分を見せて拒絶されるより、偽りの自分で受け入れられる方がマシ。そう思ってしまう。
でも実際は、偽りの自分を愛されても、それは本当に愛されているとは言えない。心のどこかで「本当の私を知ったら、きっと嫌いになる」という不安がつきまとう。
私も昔、好きになった人の前では「理想的な恋人像」を演じていた。その人が好みそうな音楽を聴いて、その人が関心を持ちそうな話題を勉強して。でも、いつも心の底に虚しさがあった。
相手の期待に応えたい気持ち
恋愛において、相手の期待に応えたいと思うのは自然なこと。
相手が明るい人が好きだと知れば、普段より明るく振る舞おうとする。相手が家庭的な人を求めていると感じれば、料理の話をしてみたり。
この気持ち自体は悪いことではない。人は愛する人のために変化し、成長できる。
問題なのは、自分の本質的な部分まで偽ってしまうこと。そして、その偽りを維持し続けなければならないプレッシャーを感じること。
完璧でありたいという願望
特に真面目で努力家な人ほど、恋愛でも「完璧な恋人」でありたいと思ってしまう。
相手を失望させてはいけない。 いつも魅力的でいなければならない。 弱音を吐いてはいけない。 ネガティブな面を見せてはいけない。
そんな思い込みが、自分らしさを封印させてしまう。
でも、完璧な人間なんて存在しない。そして、完璧な恋人を求める人も、本当は少ない。多くの人は、完璧さよりも人間らしさ、親しみやすさを求めている。
自分の価値への不安
自分を偽ってしまう根底には、「ありのままの自分では価値がない」という不安がある。
「こんな地味な趣味の話をしても、つまらないと思われる」 「こんな考え方をしていても、幼稚だと思われる」 「こんな弱い部分を見せても、がっかりされる」
でも実は、そういう「普通」の部分こそが、人間としての魅力。相手にとって親近感や安心感を与える要素でもある。
演じ続ける疲れ
偽りの自分を演じ続けることは、想像以上に疲れる。
いつも気を張っていなければならない。 一貫性を保たなければならない。 ボロが出ないように注意しなければならない。
そして何より、「いつかバレてしまうのではないか」という不安を常に抱えていなければならない。
この疲れは、関係が深まれば深まるほど大きくなる。そして最終的には、関係自体を終わらせたくなってしまうことも。
本当の自分を少しずつ出してみる
でも、いきなり完全に本当の自分をさらけ出す必要はない。
少しずつ、小さなことから始めてみよう。
今日は本当に好きな音楽の話をしてみる。 今度は素直に疲れていることを伝えてみる。 次回は自分の弱い部分を少しだけ見せてみる。
そうやって少しずつ本当の自分を出していったとき、相手がどんな反応を示すか。もし受け入れてくれるなら、その人はあなたを本当に大切に思ってくれている人。
拒絶されることの意味
もし本当の自分を出して拒絶されたら、それは確かに辛い。
でも、それは「あなたに価値がない」ということではない。単に「その人とは合わなかった」というだけのこと。
偽りの自分で長く関係を続けるより、本当の自分で短く終わる関係の方が、実は健全。なぜなら、お互いにとって本当に合う人と出会うチャンスが生まれるから。
自分らしさこそが最大の魅力
私が大学でコミュニケーション学を学んで分かったことの一つは、人の魅力は「個性」にあるということ。
誰もが持っている当たり前の特質よりも、その人だけが持っている独特な部分に、人は惹かれる。
あなたの少し変わった趣味。 あなたの独特な考え方。 あなたの意外な一面。
これらこそが、あなたにしかない魅力。それを隠してしまっては、もったいない。
愛するということ、愛されるということ
本当に愛するということは、相手のすべてを受け入れること。良い部分も、そうでない部分も含めて。
同じように、本当に愛されるということは、自分のすべてを受け入れてもらうこと。
偽りの自分で愛されても、それは本当の愛とは言えない。本当の愛は、本当のあなたを知った上で生まれるもの。
勇気を持って本当の自分でいよう
恐れる気持ちはよく分かる。私も長い間、同じように自分を偽っていた。
でも、本当の自分でいる勇気を持ったとき、人生が変わった。自分らしくいられる関係だけが残り、そうでない関係は自然と離れていった。
最初は寂しく感じたけれど、今思えば、それで良かった。本当に大切な人とのつながりが、より深くなったから。
あなたはそのままで素晴らしい
あなたが思っている以上に、あなたはそのままで魅力的。
あなたの笑い方も、考え方も、時には泣き顔も、すべてがあなたらしさ。それを隠す必要はない。
もし誰かがありのままのあなたを受け入れてくれないなら、その人はあなたにとって本当に大切な人ではないかもしれない。
本当に大切な人は、あなたのすべてを愛してくれる。そんな人との出会いを信じて、勇気を持って本当の自分でいよう。
あなたらしい恋愛が、きっと待っている。