鏡の中の自分を見て、ふと思う。
「この人、誰だろう」
恋愛をしているうちに、いつの間にか自分が分からなくなってしまった。相手に合わせているうちに、本当の自分がどこかに行ってしまった。
この感覚、あなたも経験したことがあるだろうか。
恋愛で自分を失うとき
恋愛が始まると、相手に愛されたい一心で、自分を相手好みに変えようとしてしまう。
相手が音楽好きなら音楽を聞き始め、相手がスポーツ好きならスポーツに興味を持つふりをして、相手が好む服装に変える。
最初は「新しい自分を発見できて楽しい」と思っていた。でも気づけば、自分の本当の好みや価値観が何だったのか分からなくなっている。
私も大学時代、そんな経験をした。当時付き合っていた人が文学好きで、私も必死に難しい本を読んでいた。でも本当は、もっと軽い小説やエッセイの方が好きだった。それに気づいたのは、その関係が終わってからだった。
相手の期待に応えようとする重圧
恋愛関係では、相手の期待に応えなければいけないというプレッシャーを感じやすい。
「いつも笑顔でいなきゃ」「愚痴を言ってはいけない」「完璧な恋人でいなきゃ」
そんな思い込みに縛られて、自分の本当の感情を押し殺してしまう。疲れているときも笑顔を作り、悲しいときも明るく振る舞う。
でも、そうやって演じ続けているうちに、本当の自分の感情が分からなくなってしまう。
「私たち」の中に埋もれる「私」
恋愛が深くなると、「私」よりも「私たち」が優先される。
二人の予定、二人の将来、二人の価値観。いつの間にか、自分一人の時間や自分だけの夢が後回しになっている。
友達との時間も減り、趣味も疎かになり、自分のやりたいことよりも相手との関係が最優先になる。
それ自体は悪いことではない。でも、バランスを失うと、自分という個人が「私たち」の中に埋もれてしまう。
依存とアイデンティティの関係
恋愛依存になると、相手の存在が自分のアイデンティティの一部になってしまう。
「○○さんの恋人である私」が自分のアイデンティティになり、その関係がなくなったとき、自分が何者なのか分からなくなる。
私がコミュニケーション学を学んでいたとき、印象的な理論があった。健全な人間関係は「相互依存」であり、「依存」とは異なるということ。
相互依存では、お互いが自立した個人として尊重し合う。でも依存関係では、一方または両方が相手なしには存在できなくなってしまう。
失ったものを振り返る
恋愛で失ったアイデンティティを取り戻すには、まず何を失ったのかを振り返ることから始めよう。
恋愛前の自分は、何が好きだっただろう。 どんなことに時間を使っていただろう。 どんな価値観を持っていただろう。 どんな夢を抱いていただろう。
紙に書き出してみるのもいい。昔の写真を見返すのもいい。当時の友達と話すのもいい。
きっと、忘れていた「自分らしさ」が少しずつ思い出されてくる。
小さな選択から始める
アイデンティティの回復は、小さな選択から始まる。
今日のランチは、相手が好きそうなものではなく、自分が食べたいものを選ぶ。 映画は、話題作ではなく、自分が本当に見たいものを選ぶ。 服装は、相手受けではなく、自分が着て心地良いものを選ぶ。
そんな小さな選択の積み重ねが、少しずつ自分らしさを取り戻してくれる。
一人の時間を大切にする
恋愛関係にいても、一人の時間を確保することは大切。
一人でカフェに行く。一人で映画を見る。一人で散歩する。一人で本を読む。
その時間に、自分の心の声に耳を傾けてみよう。「私は今、何を感じているだろう」「私は今、何をしたいだろう」
相手の存在を意識せずに、純粋に自分と向き合う時間を作ろう。
関係性の見直し
もし今の恋愛関係で自分を見失っているなら、その関係性を見直してみることも必要かもしれない。
相手は、本当のあなたを受け入れてくれるだろうか。 あなたが自分らしくいることを、応援してくれるだろうか。 それとも、あなたに特定の役割を期待しているだろうか。
健全な恋愛関係では、お互いが自分らしくいることができる。むしろ、相手の個性や独立性を尊重し、応援し合える。
友達とのつながりを復活させる
恋愛で疎遠になった友達との関係を、少しずつ復活させてみよう。
昔の友達は、恋愛前のあなたを知っている。彼女たちと過ごす時間は、失ったアイデンティティを思い出すきっかけになる。
「そういえば、昔はこんなことが好きだったよね」「こんなことを一緒にやったよね」
そんな会話の中で、忘れていた自分の一面が蘇ってくる。
新しい挑戦をしてみる
恋愛前にはやったことがない、新しいことに挑戦してみるのもいい。
新しい趣味、新しい学び、新しい場所。そこで出会う新しい自分も、アイデンティティの一部になる。
恋愛で失った部分を取り戻すだけでなく、新しい自分も発見できるかもしれない。
完璧な恋人である必要はない
何より大切なことは、完璧な恋人である必要はないということ。
あなたには弱さもあるし、機嫌の悪い日もある。相手と意見が合わないこともあるし、一人になりたい時もある。
それらすべてが、あなたという人間の一部。それを隠さずに表現できる関係こそが、本当に健全な恋愛関係。
自分らしさと愛は両立できる
恋愛で自分らしさを失う必要はない。
本当に愛し合う関係では、お互いの個性が輝き、お互いの成長を喜び合える。相手に合わせるのではなく、お互いが自分らしくいながら、一緒にいられる。
失ったアイデンティティは、きっと取り戻せる。時間はかかるかもしれないけれど、少しずつ、自分らしさを思い出していこう。
そして次の恋愛では、自分を失わない関係を築いていこう。あなたらしさこそが、最大の魅力なのだから。