久しぶりに鏡を見て、ふと思った。この2年間で、私は恋愛をする力を失ってしまったのではないだろうか。
コロナ禍をきっかけに始まった在宅ワーク。最初は「人間関係のストレスから解放される」と喜んでいた。でも気づいたら、人と会うこと、話すこと、そして誰かを好きになることまでが怖くなっていた。
もう一度誰かを愛せるのだろうか。そして、誰かに愛される資格は残っているのだろうか。
引きこもりは決して恥ずかしいことではない
まず最初に言いたい。引きこもり生活を送ったあなたを、誰も責めることはできない。
私もそうだった。大学でコミュニケーション学を学んでいたくせに、いや、学んでいたからこそ、人間関係の複雑さに疲れてしまった。理論では理解できるのに、実践では思うようにいかない自分にも嫌気がさした。
一人の時間は決して無駄ではなかった。本を読み、映画を見て、自分と向き合った。その時間があったから、今の自分の価値観や考え方が育った。
引きこもった理由は人それぞれ。でも、その時間を過ごしたあなたを否定する必要はない。
恋愛スキルは本当に失われるのか
「恋愛スキル」という言葉に違和感を覚える。
恋愛は技術ではない。相手を操るテクニックでもない。心と心の触れ合い、魂と魂の共鳴。そんな本質的なものが、数年の空白で失われるはずがない。
確かに、人と接する機会が減ったことで、会話が少しぎこちなくなったかもしれない。相手の反応を読み取るのに時間がかかるようになったかもしれない。
でも、それは表面的なこと。あなたの優しさ、思いやり、相手を大切に思う気持ち。そういう本当に大切なものは、何も変わっていない。
ゆっくりとしたリハビリから
焦る必要はない。いきなり恋愛モードに切り替える必要もない。
まずは小さなステップから。
コンビニの店員さんに「ありがとうございます」を少し大きな声で言ってみる。 カフェで注文するときに、少し笑顔を作ってみる。 エレベーターで一緒になった人に、軽く会釈してみる。
これらは恋愛とは関係ない。でも、人との温かな接触を思い出すための大切な練習。
私も最初はドキドキした。こんな当たり前のことなのに、なぜこんなに緊張するのだろうと思った。でも少しずつ慣れていった。そして気づいた。人との関わりって、思っていたよりもずっとシンプルで、温かいものだということを。
オンラインという新しい形
今の時代、恋愛の形も変わった。
直接会うことだけが恋愛ではない。メッセージのやり取り、オンライン通話、一緒にゲームをすること。様々な方法で心を通わせることができる。
引きこもり生活で慣れ親しんだデジタルコミュニケーション。それは決してマイナスではない。むしろ、現代の恋愛では重要なスキルとも言える。
文字でのやり取りは、実は深いコミュニケーションを生むことがある。表情や雰囲気に惑わされることなく、純粋に言葉と思考で相手と向き合える。
完璧でない自分を受け入れる
引きこもり生活を経験したあなたは、きっと以前よりも自分の弱さを知っている。
それは決して欠点ではない。むしろ、人間らしさそのもの。
完璧な人よりも、弱さを知っている人の方が、相手の痛みも理解できる。傷ついた経験があるからこそ、相手を傷つけまいとする優しさがある。
私は長い間、自分の引きこもり経験を恥じていた。でも今は思う。その経験があったから、今の私の感受性や共感力があるのだと。
新しい出会いの形を模索する
従来の出会い方にこだわる必要はない。
合コンやパーティーが苦手なら、別の方法がある。共通の趣味を通じた出会い、オンラインでの交流、読書会や小さな勉強会。
あなたが居心地良く感じられる環境で、自然に人と知り合うことから始めてみよう。
無理に社交的になる必要はない。内向的なあなたを理解してくれる人、一緒に静かな時間を過ごせる人。そういう相手の方が、きっと長く深いつながりを築ける。
自分のペースを大切に
世間は「恋愛しなければダメ」「結婚しなければダメ」と言うかもしれない。
でも、そんな声に惑わされる必要はない。
あなたはあなたのペースで、あなたの方法で、人との関係を築いていけばいい。急ぐ必要はない。焦る必要もない。
引きこもり生活で得た内省の時間、一人で過ごす能力、自分と向き合う強さ。これらはすべて、深い人間関係を築くための土台になる。
愛される資格について
「私なんかが愛される資格があるのか」
そんな風に思うことがあるかもしれない。でも、愛に資格なんて必要ない。
あなたがこれまで経験してきたこと、感じてきたこと、考えてきたこと。すべてがあなたらしさを形作っている。その唯一無二の存在に、誰かが心を動かされる日が必ず来る。
引きこもった経験も、その人があなたを理解する手がかりになるかもしれない。同じような経験をした人なら、あなたの気持ちを深く理解してくれるだろう。
今日から始める小さな一歩
恋愛スキルを取り戻すために、特別なことをする必要はない。
ただ、自分に優しくすることから始めよう。今日も頑張って生きている自分を認めてあげよう。
そして、もし誰かと話す機会があったら、その人の話を丁寧に聞いてみよう。相手に興味を持ってみよう。
それだけで十分。あなたの持っている優しさや思いやりは、きっと相手に伝わる。
恋愛は競技ではない。スキルを磨いて相手を獲得するゲームでもない。ただ、お互いを大切に思い合うこと。
その気持ちは、引きこもり生活を経験したあなたの中に、しっかりと残っている。
安心して、自分のペースで歩んでいこう。あなたらしい恋愛が、きっと待っている。