スマホを開くのが怖くなった。
インスタグラムの通知が来ても、すぐには見られない。Twitterのタイムラインを開くと、胸がざわざわする。友達のストーリーを見ていると、涙が出そうになる。
いつからだろう。SNSを見ることが、こんなに辛くなったのは。
みんなが輝いて見える
SNSの中では、みんなが輝いて見える。
素敵なカフェでの朝ごはん。友達との楽しそうなランチ。恋人との幸せそうなデート。海外旅行の美しい写真。新しい仕事への挑戦。
一つ一つは素敵で、本当に良かったねって思える。でも、それを見続けているうちに、自分の日常がどんどん色褪せて見えてくる。
私の今日は何だった? 一人でコンビニ弁当を食べて、一人でドラマを見て、一人でベッドに入った。それだけ。
比較という罠
SNSは無意識のうちに、私たちを比較の世界に引きずり込む。
他人の「ハイライト」と自分の「日常」を比べてしまう。でも考えてみれば、誰だって毎日がドラマチックなわけではない。SNSに投稿されるのは、人生の中でも特に良い瞬間だけ。
大学でコミュニケーション学を学んでいた時、「選択的自己開示」という概念を習った。人は自分にとって都合の良い情報だけを他者に伝える傾向がある。SNSは、この現象を極限まで推し進めたもの。
でも、頭では理解していても、心がついてこない。
置いていかれる感覚
一番辛いのは、置いていかれている感覚。
みんなは前に進んでいるのに、私だけが同じ場所にいるような気がする。結婚の報告、出産の報告、転職の報告、資格取得の報告。
おめでとうって言いたい。本当に心から祝福したい。でも同時に、自分には何もないという虚しさが込み上げてくる。
「いいね」を押すたび、心の中で小さくため息をついている自分がいる。
繋がっているのに孤独
SNSは「繋がり」を約束してくれるはずだった。でも実際は、こんなに繋がっているのに、こんなに孤独を感じたことはない。
画面越しに見える友達の幸せそうな様子と、自分の今の状況との落差。それが余計に孤独感を深めている。
「みんな忙しそうで楽しそう。私なんか相手にされないだろう」
そう思って、自分からメッセージを送ることもできなくなった。
投稿することの重圧
自分が何かを投稿しようとしても、迷ってしまう。
「これって投稿するほど面白いことかな」 「みんなの投稿に比べて地味すぎるかな」 「反応がなかったら恥ずかしいな」
結局、下書きに保存したまま投稿しないことが増えた。そうやって自分の存在感がどんどん薄くなっていく気がして、それもまた辛い。
いいねの数に振り回される日々
投稿したとしても、今度は「いいね」の数が気になってしまう。
投稿してから何度も画面を見返して、反応をチェックする。いいねが少ないと、「やっぱりつまらない投稿だったんだ」と落ち込む。
本来、自分の記録として投稿していたはずなのに、いつの間にか他人の評価を求めるためのツールになってしまっていた。
SNSのない時代を思い出す
時々、SNSがなかった時代を思い出す。
他人の日常を知る機会は、直接会って話すときくらいしかなかった。だから、みんながどんな生活をしているか、そこまで詳しく知らなかった。
知らないからこそ、変に比較することもなかった。自分は自分、他人は他人という境界線がもっとはっきりしていた。
あの頃の方が、心が軽やかだった気がする。
デジタルデトックスという選択
最近、思い切ってアプリを削除した。
最初は不安だった。何かを見逃してしまうんじゃないか、仲間外れにされてしまうんじゃないか。そんな恐怖があった。
でも、実際にやめてみると、心がとても軽くなった。
朝起きて最初にすることが、スマホを見ることではなく、窓を開けることになった。電車の中では、本を読むようになった。夜は、早く眠れるようになった。
本当の繋がりを取り戻す
SNSから距離を置いてみて、本当に大切な人との繋がりが見えてきた。
心配してくれて電話をかけてくれた友人。何気ない日常を共有したいと思ってくれる人。直接会って話を聞いてくれる人。
画面越しの「いいね」よりも、実際に目を見て話すこと。メッセージでのやり取りよりも、声を聞くこと。それがどれほど温かいものか、改めて実感した。
自分のペースを取り戻す
SNSのない生活は、自分のペースを取り戻すことでもある。
他人の時間軸に合わせる必要がない。他人の価値観に振り回される必要もない。自分が心地よいと思うペースで、自分らしい日々を送ることができる。
平凡な毎日も、誰かと比較しなければ、とても豊かなものだということに気づいた。
SNSと上手に付き合う方法
完全にSNSをやめる必要はないかもしれない。でも、付き合い方を変えることはできる。
見る時間を決める。投稿する前に一度立ち止まって考える。他人の投稿を見て辛くなったら、素直に画面を閉じる。
そして何より、SNSの中の「ハイライト」と自分の「リアル」を比較しないこと。
あなたのペースで大丈夫
もしあなたも今、SNSを見るのが辛いなら、それは決して異常なことではない。
感受性が豊かで、他人を思いやる心があるからこそ、そう感じてしまうのだと思う。
無理してSNSを見続ける必要はない。辛いときは、画面を閉じて、現実の世界に目を向けてみて。
そこには、画面越しでは感じられない、本当の温かさが待っているから。
あなたのペースで、あなたらしい繋がり方を見つけていけばいい。急ぐ必要はない。今のあなたのままで、十分素敵なのだから。