「もう少し連絡をマメにしてくれたら完璧なのに」 「もう少し積極的になってくれたら」 「もう少しロマンチックだったら」
恋愛をしていると、ついつい相手に対してこんな風に思ってしまうことがある。
8割は好き。でも残りの2割を変えてもらえたら、もっと好きになれるのに。
そんな気持ちになったこと、ありませんか?
私もそうだった
正直に言うと、私もずっとそうだった。
大学でコミュニケーション学を学んでいたこともあって、「人は変われるもの」「適切なコミュニケーションがあれば理解し合える」と信じていた。
だから恋愛でも、相手の「気になる部分」について話し合えば、きっと改善してもらえると思っていた。
「私はもっと言葉で愛情を表現してもらいたい」 「もう少し計画的に行動してもらいたい」 「もう少し私の話を聞いてもらいたい」
そんな要望を、愛情という名のもとに相手に伝え続けた。
変わってもらおうとする心理
なぜ私たちは、相手を変えようとしてしまうのだろう。
一つには、「この人ともっと幸せになりたい」という純粋な気持ちがある。相手のことが好きだからこそ、もっと良い関係を築きたいと思う。
でも、その根底には「理想の恋人像」があることも事実。映画や小説、友達の恋愛話から作り上げた「こうあるべき」という基準がある。
そして無意識のうちに、目の前の相手をその理想に当てはめようとしてしまう。
変えられない現実
でも現実は残酷だった。
どんなに話し合っても、相手の本質的な部分は変わらない。一時的に変わったように見えても、結局は元に戻ってしまう。
それどころか、変わってもらおうとすればするほど、相手は疲れてしまう。「ありのままの自分では愛されていない」と感じてしまう。
そして関係はどんどんギクシャクしていく。
愛とコントロールの境界線
「相手を変えようとすること」と「愛すること」は、実は正反対かもしれない。
愛するということは、相手をありのまま受け入れること。 コントロールするということは、相手を自分の思い通りにしようとすること。
私は長い間、この二つを混同していた。「愛しているから変わってほしい」と思っていたけれど、それは愛ではなくコントロールだった。
相手の立場になって考えてみる
もし誰かに「ここを変えてほしい」と言われ続けたら、どう感じるだろう。
最初は「愛されているから」と嬉しく思うかもしれない。でも段々と、「今の自分では不十分なんだ」と感じるようになる。
そして、自分らしさを失っていく。相手に合わせることばかり考えて、本当の自分が分からなくなってしまう。
私が学んだこと
ある時、大切な人に言われた言葉がある。
「君が僕を変えようとするとき、僕は君から逃げたくなる。でも君が僕をそのまま受け入れてくれるとき、僕は自然と君に近づきたくなる」
その言葉で、ハッと気づいた。
相手を変えようとすることは、相手を遠ざけることだった。受け入れることこそが、相手を近づけることだった。
変わるのは自分
相手を変えることはできない。でも、自分の見方を変えることはできる。
相手の「短所」だと思っていたことが、実は長所だったりする。 相手の「足りない部分」が、実は自分にはない魅力だったりする。
私が「計画性がない」と思っていた彼の自由さは、実は私にはない素晴らしい才能だった。 私が「言葉足らず」だと思っていた彼の控えめさは、実は私にはない上品さだった。
完璧な人なんていない
そもそも、完璧な恋人なんて存在しない。
誰にでも長所があり、短所がある。素敵な部分があり、ちょっと困った部分もある。
それが人間らしさであり、魅力でもある。
完璧な人と付き合ったら、きっとつまらないと思う。予想外の反応や、ちょっとした失敗があるからこそ、人間関係は面白い。
受け入れることの美しさ
相手をありのまま受け入れるということは、諦めることではない。
むしろ、その人の全てを愛するということ。長所も短所も含めて、「この人が好き」と言えること。
そうやって受け入れられた相手は、安心感を得る。そして安心感の中で、自然と成長していく。
変えようとしたときには変わらなかった相手が、受け入れたときに自然と変化する。それが人間の不思議なところ。
もし相手が変わったら
でも、考えてみてほしい。
もし相手があなたの要望通りに変わったとしたら、それはもう「その人」ではなくなってしまうかもしれない。
あなたが最初に惹かれた、その人らしさが失われてしまうかもしれない。
自分が変わることの方が早い
相手を変えようとするよりも、自分の受け取り方を変える方がずっと早い。
相手の行動の意味を理解しようとしてみる。 相手の立場に立って考えてみる。 相手の良い部分に注目してみる。
そうすることで、同じ相手でも全く違って見えることがある。
愛は受容から始まる
本当の愛は、相手を変えることから始まるのではない。相手を受け入れることから始まる。
そして、受け入れられた相手は、愛される喜びの中で自然と輝いていく。
私たちにできることは、相手を変えることではなく、相手が自分らしくいられる環境を作ること。
今日から始められること
もし今、相手を変えようとしている自分に気づいたら、少し立ち止まってみて。
「この人のどこが好きで付き合い始めたんだっけ?」 「この人らしさって、どんなところなんだろう?」 「私が変えたいと思っている部分も、実は魅力の一部かもしれない」
そんな風に考え直してみると、きっと新しい発見がある。
相手を変えようとするエネルギーを、相手を理解しようとするエネルギーに変えてみる。
きっと、今よりもっと深い愛を感じられるはず。
愛とは、相手を自分色に染めることではなく、相手の色彩をそのまま美しいと感じることなのかもしれない。