部屋のカーテンを閉め切って、外の世界と距離を置いた日々。
周りから見れば「問題のある期間」かもしれない。でも今振り返ると、あの時間は私にとって必要不可欠な自分探しの旅だった。
引きこもっていた期間に、私は本当の意味で自分と向き合うことができた。そして、思いがけない発見をたくさんした。
静寂の中で聞こえてくる声
外の世界の騒音から離れると、初めて自分の内側の声が聞こえてくる。
毎日学校や職場に通い、人と会い、SNSをチェックし、テレビを見ていた頃は、常に外からの刺激に反応するだけで精一杯だった。自分が本当に何を考え、何を感じているのか、立ち止まって考える時間がなかった。
でも一人の部屋で、何時間も何もしないでいると、心の奥底からいろいろな思いが浮かんでくる。
「私は本当は何が好きなんだろう」 「どんな時に幸せを感じるんだろう」 「今まで我慢していたことは何だろう」
こんな当たり前のような疑問に、私は答えられずにいた。
他者の期待から解放される体験
私が大学でコミュニケーション学を学んでいたとき、興味深い理論を学んだ。人は常に「他者からどう見られるか」を意識して行動している、というもの。
引きこもり期間中、初めてその呪縛から解放された。
誰にも見られていない。誰からも評価されない。誰の期待にも応える必要がない。
最初は不安だった。「こんなことしていていいのだろうか」「みんなは頑張っているのに」と自分を責めた。
でも少しずつ、その自由さに慣れてくると、本当の自分が顔を出し始めた。
好きな本を心ゆくまで読む。 好きな音楽を聞きながら、ぼんやりと考え事をする。 誰かに気を遣うことなく、自分のペースで過ごす。
こんなシンプルなことが、こんなにも心地よいなんて。
孤独と向き合う強さ
引きこもり期間中、一番辛かったのは孤独感だった。
でも、その孤独と正面から向き合ううちに、大切なことに気づいた。孤独は敵ではない。孤独は、自分と深く対話するためのスペースなのだと。
一人でいることが怖くなくなった。むしろ、一人の時間の豊かさを知った。
誰かといなければ価値がない、なんてことはない。一人でいても、私は私として存在している。それだけで十分価値がある。
この実感は、今でも私の支えになっている。
内省する力の発見
引きこもっている間、私は膨大な量の本を読んだ。哲学書、心理学の本、文学作品。普段なら「難しそう」と敬遠していた本も、時間があることで挑戦できた。
そして気づいた。私は深く考えることが好きなのだと。複雑な問題について、あれこれ思いを巡らせることに喜びを感じる。
これは社会的には必ずしも評価されない能力かもしれない。でも私にとっては、かけがえのない才能だった。
感受性という宝物
引きこもり期間中、小さなことに心を動かされることが多くなった。
窓から見える空の色の変化。 鳥のさえずり。 本の中の美しい一文。 音楽の中の繊細なメロディー。
こんなことに涙が出そうになるなんて、以前の私には理解できなかっただろう。
でも今は分かる。この繊細な感受性こそが、私の一番の宝物だということを。
世の中は「強くなれ」「鈍感になれ」と言うかもしれない。でも私の繊細さは、私らしさの一部。それを隠す必要はない。
創造性の芽生え
時間がたっぷりあることで、今まで眠っていた創造性が目を覚ました。
絵を描いてみたり、詩を書いてみたり、料理に凝ってみたり。誰かに見せるためではなく、自分が楽しいから。
その過程で気づいた。私は何かを作り出すことに喜びを感じるのだと。
完璧である必要はない。上手である必要もない。ただ、自分の内側から湧き上がるものを形にすることの純粋な楽しさ。
自分のペースの大切さ
社会に出ていると、常に他人のペースに合わせることが求められる。
でも引きこもり期間中、私は自分本来のペースを思い出した。
朝はゆっくり起きて、午前中は読書。午後は散歩がてらに近所のコンビニへ。夜は音楽を聞きながら、日記を書く。
このペースが、私にとって一番自然で、一番創造的でいられるリズムだった。
引きこもりは恥ずかしいことではない
社会は「引きこもり」にネガティブなイメージを持っている。
でも私の経験から言えば、引きこもり期間は決して無駄な時間ではない。むしろ、自分と深く向き合う貴重な機会。
もちろん、ずっと引きこもり続けるのは現実的ではない。でも、一定期間社会から距離を置くことで見えてくるものもある。
自分を責める必要はない。その時間に意味があったことを、いつか必ず理解できる日が来る。
再び世界とつながる準備
引きこもり期間を通じて見つけた自分の価値を、今度は外の世界でも大切にしていきたい。
無理に他人に合わせる必要はない。自分のペースで、自分らしく、少しずつ社会とつながっていけばいい。
私が見つけた価値:
- 深く考える力
- 繊細な感受性
- 一人でいることを恐れない強さ
- 創造する喜び
- 自分本来のペース
これらすべてが、今の私を作っている大切な要素。
あなたの中にも宝物がある
もしあなたが今、社会から距離を置いている時期にいるなら、自分を責めないで。
その時間の中にも、きっと大切な発見が待っている。あなたの中にも、まだ見つけていない宝物がある。
急ぐ必要はない。他人と比べる必要もない。
今のあなたは、今のあなたなりの価値を持っている。それを見つける時間を、大切にしてほしい。
一人でいる時間は、決して失われた時間ではない。自分と出会うための、大切な時間なのだから。