12月のイルミネーションが美しい夜。街はカップルだらけで、手をつないで歩く恋人たちの姿がそこかしこに見える。
私は一人で、同じ道を歩いている。
別に恋人が欲しくないわけじゃない。でも今はいない。そして、この瞬間の自分の気持ちをどう整理していいのかわからない。
見えてしまう幸せな風景
カップルたちは本当に幸せそうに見える。
手をつないで歩く姿。お互いを見つめ合って笑っている姿。男性が女性のコートを着せてあげる優しい仕草。女性が男性の腕に寄り添って歩く姿。
そんな光景を目にするたび、胸の奥がキュッと締め付けられる。
「私にもあんな時期があったらいいのに」 「私も誰かとあんな風に歩いてみたい」
そんな気持ちがふわふわと浮かんでは、また心の奥に沈んでいく。
自分だけが取り残された感覚
大学でコミュニケーション学を学んでいたとき、「社会的排除」について研究したことがある。人は他者とのつながりを求める生き物で、そのつながりを感じられないとき、強い孤独感を覚える。
まさに今の私がそれかもしれない。
周りのカップルたちは私には見えていないかのように、自分たちの世界に没頭している。私はまるで透明人間になったような、世界から取り残されたような感覚に陥る。
でも同時に、こんな風に感じてしまう自分が情けなくもある。
比較してしまう心
人は無意識のうちに、自分と他者を比較してしまう生き物だ。
特に、自分にないものを持っている人を見ると、その差がより鮮明に感じられる。
カップルたちの手をつないだ指を見て、自分の空いている手を意識する。 お互いを見つめ合う視線を見て、自分が見つめる相手がいないことを思い知る。 楽しそうな会話を聞いて、自分の沈黙を感じる。
「比較なんてしなければいい」
頭ではそう思う。でも心は、どうしても比べてしまう。
一人でいることの罪悪感
なぜだろう、一人でいることに罪悪感を覚えてしまうことがある。
まるで一人でいることが、何か間違ったことであるかのように。恋人がいないことが、自分の価値を下げるもののように。
でも本当は、一人でいることは罪ではない。恋人がいないことも、人間としての価値と関係ない。
それでも、カップルだらけの街を歩いていると、そんな当たり前のことを忘れてしまう。
見えない部分への想像
でも、ふと気づくことがある。
私に見えているのは、カップルたちの表面的な幸せだけかもしれない。
手をつないで歩いているカップルも、家に帰ればケンカをしているかもしれない。 仲良く話しているように見える二人も、実は心の奥では満たされていないかもしれない。 楽しそうに見える関係も、実はどちらかが無理をしているかもしれない。
恋愛は、外から見えるほど単純ではない。美しい瞬間もあれば、苦しい時間もある。
一人の時間の豊かさ
一人で街を歩いていると、カップルには見えない景色が見える。
ショーウィンドウの美しいディスプレイを、誰にも邪魔されずじっくりと眺められる。 気になったカフェに、気兼ねなく入ることができる。 自分のペースで歩き、自分の好きな道を選べる。
誰かといるときには気づかない、小さな発見や感動がある。
私が一人で歩いているとき、実は心は自由だ。誰かに合わせる必要もないし、誰かの機嫌を気にする必要もない。
孤独と独りの違い
「孤独」と「独り」は違う。
孤独は、つながりを求めているのに得られない状態。 独りは、自分と向き合っている状態。
同じ一人でいることでも、その心の在り方で感じ方は全く変わる。
カップルだらけの街を歩くとき、私は孤独を感じることもあるけれど、独りの時間を楽しむこともできる。
その切り替えは、少しの意識の変化でできる。
今この瞬間を大切にする
カップルたちの幸せそうな姿を見て、羨ましく思うのは自然なこと。
でも、その気持ちに支配される必要はない。
今の私には、今の私にしかできないことがある。今の私にしか見えない景色がある。
一人で街を歩く時間も、私の大切な人生の一部。この時間があるからこそ、いつか誰かと歩くときの喜びも、より深く感じられるかもしれない。
あなたは一人じゃない
カップルだらけの街で一人でいると、世界で自分だけが一人のような気持ちになることがある。
でも実際には、同じように一人で歩いている人は、たくさんいる。
あなたと同じような気持ちで、同じような道を歩いている人が、きっとどこかにいる。
その人たちと直接出会うことはないかもしれないけれど、同じ気持ちを共有している。そう思うだけで、少し心が軽くなる。
明日もまた歩こう
今日、カップルだらけの街を一人で歩いた。
時には切ない気持ちになったけれど、それも含めて今日という日。
明日もまた街を歩こう。一人かもしれないし、もしかしたら誰かと一緒かもしれない。
どちらでも大丈夫。私は私らしく、自分のペースで歩んでいこう。
街の景色は毎日少しずつ変わっている。私の心も、毎日少しずつ成長している。
そう信じて、今夜もそっと眠りにつこう。