鏡を見るたび、数年前の自分とは違う顔がそこにある。
表情が乏しくなった。目に光がなくなった。笑顔を作るのも不自然になった。引きこもり生活が続いて、気がつけば失ったものがたくさんあることに気づく。
でも、取り戻したい。もう一度、輝いていた頃の自分に近づきたい。
何を失ったと感じているのか
まず、自分が何を失ったと感じているのかを整理してみよう。
人との会話のスムーズさ。 自然な笑顔。 外出することへの抵抗のなさ。 新しいことへの好奇心。 未来への希望。 自分への自信。
これらは確かに、以前は当たり前のように持っていたもの。でも本当に「失った」のだろうか。それとも、一時的に眠っているだけなのだろうか。
私も大学を卒業してから、しばらく引きこもりがちになった時期がある。その時は同じように「すべてを失った」と感じていた。でも今振り返ると、失ったのではなく、一時的に使わなくなっただけだったのかもしれない。
実は失っていないもの
引きこもり生活の間も、あなたは多くのものを持ち続けている。
考える力。 感じる心。 学ぶ能力。 想像力。 優しさ。
これらは決して失われていない。使う機会が少なくなっただけで、あなたの中にしっかりと残っている。
そして、一人で過ごした時間で新しく得たものもある。内省する力、自分と向き合う時間、深く考える習慣。これらは以前のあなたにはなかった貴重な財産。
少しずつ、練習から始める
失ったと感じるものを取り戻すには、練習が必要。でも焦る必要はない。
会話のスムーズさを取り戻したいなら、まずは一人で声に出して話してみる。好きな本を音読したり、日記を声に出して読んでみたり。声を出すことに慣れることから。
自然な笑顔を取り戻したいなら、鏡の前で少しずつ表情を作ってみる。最初は不自然でも構わない。筋肉は使わないと固くなるけれど、使えば柔らかくなる。
外出への抵抗を減らしたいなら、まずは家の周りを歩いてみる。コンビニまで行ってみる。小さな成功体験を積み重ねる。
段階的な回復を受け入れる
すべてを一度に取り戻そうとしなくて大丈夫。
今日は5分外を歩けた。 今週は家族と少し長く話せた。 今月は新しい本を読み始められた。
こんな小さな進歩も、確実な回復の証。以前の自分と比較するのではなく、昨日の自分と比較してみて。
私も回復期には、「もう元の自分には戻れないのかもしれない」と不安になったことがある。でも実際は、元の自分に戻るのではなく、新しい自分になっていくプロセスだった。
完璧を目指さなくていい
引きこもり前の自分が完璧だったわけではない。
あの頃のあなたにも、不安はあったし、苦手なこともあった。ただ、それに慣れていただけ。
今のあなたは、一人で過ごした時間で得た深い洞察力や、困難を乗り越えようとする意志力を持っている。これらは以前のあなたにはなかった強さ。
完璧な以前の自分を目指すのではなく、今の自分を基点にして、少しずつ成長していけばいい。
人とのつながりを少しずつ
人間関係を取り戻すのは時間がかかる。でも不可能ではない。
最初はオンラインから始めてもいい。好きなことについてSNSで発信してみたり、趣味のコミュニティに参加してみたり。
直接会うのはまだ難しくても、文字を通して人とつながることはできる。そこから徐々に、リアルな関係に発展させていけばいい。
私も最初は本の感想をブログに書くことから始めた。それを読んでくれる人がいて、コメントをもらって、少しずつ人とのつながりを感じられるようになった。
失ったものより得たもの
引きこもり生活で失ったものばかりに目を向けがちだけれど、得たものにも注目してみて。
自分と向き合う時間があったから、本当に大切なものが見えた。 一人でいることに慣れたから、他者に依存しすぎない関係を築けるようになった。 困難を経験したから、他者の痛みが理解できるようになった。
これらは、以前のあなたにはなかった貴重な財産。
新しい自分として歩み始める
取り戻したいと思うその気持ちが、すでに回復の始まり。
完璧な以前の自分に戻る必要はない。引きこもり生活で得た洞察と、これから築いていく新しい経験を組み合わせて、より深みのある自分になっていけばいい。
今日できることから始めよう。 明日は今日より少しだけ前に進もう。 来月は今月より少しだけ自信を持てるようになろう。
あなたは一人じゃない
同じような経験をした人は、あなたが思っている以上にたくさんいる。みんな静かに、自分のペースで回復に向かっている。
あなたも、その一人。焦る必要はない。比較する必要もない。あなたのペースで、あなたらしい方法で、失ったと感じるものを取り戻していけばいい。
そして気づくかもしれない。実は何も失っていなかったということを。ただ、しばらく使わなかっただけだったということを。
今日から、小さく始めよう。あなたの回復への道のりを、そっと応援している。