雑貨屋さんでペアのマグカップを見つけた。淡いピンクと淡いブルー。とても可愛くて、思わず手に取ってしまう。
でも結局、買わずに店を出る。
一人でペアグッズを買う勇気がない。そして何より、それを誰かと使う相手がいない。
家に帰って、一人でコーヒーを飲みながら思う。私も誰かとお揃いのものを持ちたい。
小さな「つながり」への憧れ
お揃いのものって、なんて素敵なんだろう。
それは単なる物ではなく、誰かとの特別なつながりの証。「私たちは一緒」という小さな宣言。離れていても、同じものを身につけているだけで、心が近く感じられる。
SNSで友達のペアリングの写真を見るたび、胸がきゅっとする。羨ましさと切なさが混じった、複雑な気持ち。
私も誰かと、そんな特別なものを共有したい。
昔の友達を思い出して
中学生の頃、仲良しの友達とお揃いのキーホルダーを買ったことがある。
星の形をした小さなキーホルダー。一つは青、一つは赤。じゃんけんで色を決めて、私は青になった。
学校に持って行って、お互いに「お揃いだね」って笑い合った。たったそれだけのことなのに、なんだかとても特別な気分だった。
でも高校に上がって環境が変わり、いつの間にか疎遠になってしまった。そのキーホルダーは今でも引き出しの奥にしまってある。色あせて、少し傷ついているけれど、捨てられない。
あの頃の、純粋に誰かとつながっていたいという気持ちを思い出す。
恋人同士のお揃いへの憧れ
でも今は、友達とのお揃いよりも、恋人とのお揃いに憧れる。
ペアリング、お揃いのTシャツ、同じブランドの時計。街で見かけるカップルが身につけているそれらが、なんだかとても輝いて見える。
私も誰かと、そんな風に「私たちのもの」を持ちたい。一緒に選んで、一緒に買って、一緒に身につけて。
そんな当たり前のようなことが、私にとってはとても特別で、憧れの対象。
一人でペアグッズを見る切なさ
ショッピングモールを歩いていると、至る所にペアアイテムがある。
ペアリングのコーナー、カップルお揃いTシャツ、ペアウォッチ。どれも素敵で、どれも欲しくなる。でも一人で見ていると、なんだか場違いな気がしてしまう。
店員さんも、一人でペアアイテムを見ている私を見て、きっと不思議に思っているだろう。「プレゼント用ですか?」と聞かれることもあるけれど、正直に「自分用です」とは言えない。
だから結局、見るだけで終わってしまう。
一人でも買ってみた勇気
でも先月、思い切って一人でペアマグカップを買ってみた。
白地に小さな猫の絵が描かれた、とても可愛いマグカップ。店員さんに「ギフト包装はいかがですか?」と聞かれたけれど、「大丈夫です」と答えた。
家に帰って、一つは食器棚にしまった。もう一つでコーヒーを飲む。
いつか誰かと一緒に使える日が来ることを信じて。その時まで、大切に取っておこう。
お揃いじゃなくても
私は大学でコミュニケーション学を学んでいたとき、人間関係におけるシンボルの重要性について考えたことがある。
お揃いのものは確かに特別。でも、必ずしも同じものを持つ必要はないのかもしれない。
例えば、一緒に選んだ違う色のリング。お互いが好きな香りの違う香水。同じお店で買った、でも違うデザインのアクセサリー。
大切なのは、「一緒に選んだ」という記憶と、「その人を思い出す」という気持ち。
今は一人でも、いつか
今は一人でペアグッズを眺めているだけかもしれない。でもいつか、誰かと一緒にお店を回って、「これ可愛いね」「お揃いにしようか」なんて会話をする日が来るかもしれない。
その日が来るまで、一人でも素敵なものを選ぶ目を養っておこう。お揃いにしたいものをリストアップしておこう。
そして何より、お揃いのものを持ちたいと思える相手と出会えるよう、自分自身も魅力的でいよう。
友達とのお揃いも素敵
恋人とのお揃いだけが特別なわけではない。
大切な友達とのお揃いも、家族とのお揃いも、それぞれに特別な意味がある。
もしかしたら、恋人を待ちながら、まずは友達とお揃いを楽しんでみるのも良いかもしれない。その練習が、いつか恋人とのお揃いを選ぶときに役立つかもしれない。
一人の時間も大切に
でも、一人の時間も大切にしよう。
今は一人でコーヒーを飲んでいるマグカップも、一人で身につけているアクセサリーも、すべて自分が選んだ大切なもの。
誰かとのお揃いを待ちながら、一人でも自分らしいものを選び続けよう。そうやって培われたセンスは、きっといつか誰かと共有できる。
その日が来ることを信じて
私は今日も、一人でお店を見て回る。ペアアイテムのコーナーで足を止めて、「いつかこれを誰かと選べたらいいな」と思う。
その「いつか」がいつ来るかは分からない。でも必ず来ると信じている。
その日まで、一人でも心躍るものを見つけ続けよう。お揃いへの憧れを大切に持ち続けよう。
きっと、その純粋な気持ちに気づいてくれる人がいる。そして一緒に、素敵なお揃いのものを選んでくれる人がいる。
今日買えなかったペアマグカップも、明日は誰かと一緒に買いに行けるかもしれない。
そんな小さな希望を胸に、今日も一歩ずつ歩んでいこう。