夜、一人でベッドに横になっているとき、ふと思う。
誰かに大切にされたい。
ただそれだけの、シンプルで切ない願い。でも、その気持ちを口に出すのは少し恥ずかしい。「甘えている」「わがまま」「依存的」そんな風に思われそうで。
でも、この気持ちは決して恥じるべきものではない。人間として、とても自然で、とても大切な感情だから。
大切にされるってどういうこと?
「大切にされたい」と言っても、何を求めているのかは人それぞれ。
高価なプレゼントを欲しがっているわけでも、特別扱いをしてもらいたいわけでもない。
私が求めているのは、もっとシンプルなこと。
疲れて帰ってきたとき、「お疲れさま」と言ってもらえること。 体調が悪いとき、心配してもらえること。 何気ない話を、最後まで聞いてもらえること。 落ち込んでいるとき、そっと寄り添ってもらえること。
そんな日常の小さな気遣いの中に、「あなたを大切に思っている」というメッセージを感じたい。
自分で自分を大切にしているのに
私は自分なりに、自分を大切にしようと努力している。
好きな本を読み、好きな音楽を聞き、美味しいものを食べる。部屋を綺麗に保ち、身だしなみにも気を遣う。健康にも注意している。
でも、それだけでは満たされない何かがある。
自分が自分を大切にするのと、誰かが自分を大切にしてくれるのとでは、心に響く深さが違う。自分では与えられない安心感や温かさがある。
これは決して自分を軽視しているわけではない。ただ、人間は本来、誰かとのつながりの中で生きる生き物だから。
大学時代の気づき
コミュニケーション学を学んでいたとき、人間の基本的欲求について学んだ。
マズローの欲求階層説では、生理的欲求、安全欲求の次に「愛と所属の欲求」が来る。つまり、愛されたい、受け入れられたいという気持ちは、人間の根本的な欲求の一つ。
でも現実の社会では、この欲求を素直に表現することが難しい。「自立した大人」であることが求められ、「誰かに依存したい」という気持ちは弱さとして見られがち。
特に女性は、「強くて自立した女性」であることを期待される一方で、「愛らしく守られるべき存在」でもあることを求められる。この矛盾の中で、本当の気持ちを表現するのは簡単ではない。
過去の傷が影響していることも
誰かに大切にされたいという気持ちが特に強いとき、それは過去の経験が影響していることもある。
子どもの頃、十分に愛されなかった経験。 大切な人に裏切られた経験。 自分の価値を否定された経験。
そんな過去があると、「今度こそ、本当に大切にしてもらいたい」という気持ちが強くなる。
私も振り返ってみると、いつも人の顔色を伺って生きてきた。相手に嫌われないように、がっかりされないように。でもそうやって完璧であろうとすればするほど、本当の自分を大切にしてもらえているという実感が薄れていった。
大切にされる価値がある
まず、あなたには大切にされる価値がある。これは絶対的な事実。
あなたが今まで積み重ねてきた努力も、 あなたの優しさも、 あなたの傷つきやすさも、 あなたの不完全さも、
すべてがあなたらしさであり、誰かにとってはかけがえのない宝物。
「大切にされたい」と思うこと自体が、あなたが愛に値する人間である証拠でもある。自分の価値を信じているからこそ、その価値を認めてもらいたいと思うのだから。
小さなサインを見逃さないで
実は、日常の中に「大切にされているサイン」はたくさんある。でも、それに気づかずに通り過ぎてしまうことが多い。
友達からの何気ないLINE。 コンビニの店員さんの丁寧な対応。 電車で席を譲ってくれる人。 道を尋ねたときに親切に教えてくれる人。
これらはすべて、あなたを一人の人間として大切に扱ってくれている証拠。完璧な愛ではないかもしれないけれど、確かに存在する温かさ。
自分から大切にすることで
不思議なことに、自分が誰かを大切にし始めると、自分も大切にされるようになることが多い。
これは計算ではない。純粋に相手を思いやる気持ちが、相手の心に響くから。
私も人との関わりを避けがちだった時期があった。でも、少しずつ周りの人に関心を向け、小さな親切を心がけるようになったとき、逆に人から親切にされることが増えた。
愛は循環するもの。まず自分から流し始めることで、やがて自分のところにも流れてくる。
理想的な関係を急がない
「誰かに大切にされたい」という気持ちが強いとき、理想的な関係を急ぎすぎてしまうことがある。
でも、本当に深い愛情は時間をかけて育つもの。お互いを知り、信頼し、支え合う関係は、一日や二日では築けない。
焦らず、でも希望は捨てずに。今日という日を丁寧に生きながら、そんな関係が築ける人との出会いを待とう。
あなたの存在そのものが贈り物
最後に、覚えていてほしいことがある。
あなたが「大切にされたい」と願うこと自体が、この世界への贈り物だということ。
なぜなら、その気持ちがあるからこそ、あなたは誰かを大切にすることができるから。愛されたいと思う人だからこそ、愛することの大切さを知っているから。
あなたの優しさと繊細さは、きっと誰かの心の支えになる。あなたを大切に思ってくれる人は、必ずどこかにいる。
今夜もその人のことを想いながら、自分を大切にして眠りにつこう。明日もまた、愛にあふれた一日が始まりますように。