「頑張って」
そう言われるたび、なぜか胸が苦しくなる。相手は善意で言ってくれているのに、素直に「ありがとう」と言えない自分がいる。
むしろ、もう十分頑張っているのに、まだ足りないのかと感じてしまう。
すでに限界まで頑張っている
私たちが「頑張って」と言われて辛く感じるのは、もうすでに精一杯頑張っているから。
朝起きるのも、人と会うのも、日常を維持するのも、すべてが最大限の努力の結果。それなのに「頑張って」と言われると、今の頑張りが足りないと否定されたような気持ちになる。
私も大学時代、周りから見れば順調に見えていたと思う。でも実際は、毎日を過ごすだけで精一杯だった。人との関わりに疲れ、勉強についていくのに必死で、夜は布団の中で泣いていることもあった。
そんなとき「もっと頑張って」と言われることが、どれほど重い負担になるか。
努力の方向性への不安
「頑張って」と言われると、今の頑張りの方向が間違っているのではないかという不安も生まれる。
正しい方向に頑張っているなら、もう結果が出ているはず。まだ結果が出ていないということは、頑張り方が悪いのかもしれない。
でも、何をどう頑張ればいいのかわからない。そんな迷いがあるときの「頑張って」は、まるで霧の中で道を指し示されているような心境になる。
頑張ることの孤独
「頑張って」という言葉には、どこか距離感がある。
「私は応援しているけれど、実際に行動するのはあなた」という意味が込められているから。つまり、結果的に一人で頑張らなければならないという現実を突きつけられる。
本当に欲しいのは「頑張って」という言葉ではなく、「一緒にいるよ」「そのままでいいよ」という寄り添いなのかもしれない。
私が一番しんどかった時期、友人から「頑張って、きっと大丈夫だから」と言われた。優しい言葉だったけれど、なぜか孤独感が増した。「きっと大丈夫」と言われても、今は大丈夫じゃないから悩んでいるのに。
期待への重圧
「頑張って」という言葉の裏には、期待が込められている。
「あなたならできる」「きっと良い結果が出る」そんな期待。でも、その期待に応えられなかったらどうしよう。がっかりさせてしまったらどうしよう。
期待されることは嬉しいけれど、同時にプレッシャーでもある。特に完璧主義傾向のある人にとって、期待は重い足枷になることがある。
頑張ることが当たり前という前提
「頑張って」という言葉には、頑張ることが当然という前提がある。
でも時には、頑張らない選択肢があってもいいのではないだろうか。休む選択肢、諦める選択肢、現状維持の選択肢。
常に向上や成長を求められる社会の中で、「頑張って」という言葉は、その価値観を強化してしまう。
本当に欲しい言葉
では、「頑張って」の代わりに、どんな言葉があったら嬉しいだろう。
「今でも十分頑張ってるね」 「無理しないでね」 「そばにいるから」 「あなたのペースでいいよ」 「今日もお疲れさま」
これらの言葉は、今の状態を認めてくれる。否定ではなく受容、要求ではなく理解を示してくれる。
自分への「頑張って」をやめてみる
他人から言われる「頑張って」が辛いなら、まず自分が自分に言う「頑張って」をやめてみよう。
「もっと頑張らなきゃ」 「これじゃダメだ」 「まだまだ足りない」
そんな自分への厳しい声を、少し優しい声に変えてみる。
「今日もよく頑張った」 「これで十分」 「ゆっくり休もう」
自分に優しくできるようになると、他人からの「頑張って」も、少し軽やかに受け取れるようになる。
頑張らない日があってもいい
毎日頑張る必要はない。
頑張らない日、何もしない日、ただ存在するだけの日があってもいい。そんな日があるからこそ、頑張れる日もある。
私も今は、頑張らない日を意識的に作るようにしている。何の予定も入れず、何も達成しようとしない日。そんな日は罪悪感を感じることもあるけれど、心が軽やかになるのを感じる。
「頑張って」と言われたときの対処法
それでも「頑張って」と言われることはある。そんなとき、心を軽くする方法がある。
相手の善意として受け取りつつ、自分の中で翻訳してみる。
「頑張って」→「応援してるよ」 「頑張って」→「あなたのことを気にかけてるよ」 「頑張って」→「一人じゃないよ」
そうやって、プレッシャーではなく愛情として受け取ってみる。
あなたはもう十分頑張っている
最後に、これだけは伝えたい。
あなたはもう十分頑張っている。今この瞬間も、生きているだけで素晴らしい。呼吸をして、心臓を動かして、一日一日を重ねている。それがどれほど尊いことか。
これ以上頑張る必要はない。もし頑張りたいなら、あなたのペースで。もし疲れたなら、いつでも休んでいい。
「頑張って」という言葉に傷ついてしまうあなたの繊細さも、大切な個性の一つ。その優しい心を、どうか大切にしてほしい。
今日も一日、お疲れさま。